■ 高度なエネルギー・システム
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▲眠れる預言者、エドガー・ケイシー。 |
この物質はそれ自体熟をもち、水その他の物質を通過し、都市の需要を満たすに足る十分なエネルギーを供給することが可能である。このエネルギーは光線に転化して通信手投にも用いることができ、人間の老化を防止する生命力をももっていた。
まさに現代文明にとっても、のどから手が出るほどの装置である。しかしながら、こうしたケイシーのリーディングを、プラトンの記述と重ねあわせると、ますます多くの矛盾が生じてくる。だが、ケイシーのリーディングによるアトランティスは、プラトンが書き記した時代よりも、5000〜6000年以上も昔のできごとである。当時は、アトランティスにとっても黄金期であったとされていることなどを考えあわせると、プラトンの記述はアトランティス未期の堕落した時代に相当するのかもしれない。
ともあれ、われわれはここでは黄金期におけるアトランティスの技術文明を見ていこう。NASA(米航空宇宙局)のJ・H・サットン博士によれば、アトランティスのエネルギー・システムは、核融合炉と高パワーのルビー・レーザー、石英塊からなる重力発生装置ではないかということである。つまりツーオイ石のエネルギー・システムは、現代でいうところのレーザー装置であったのだという。
いずれにせよ、超古代のアトランティス人たちはものすごい装置をもっていたということになり、無限のエネルギー源に恵まれていたともいえよう。こうなると文明はかぎりなく発達し、「衣食足りて礼節を知る」のたとえどおり、人びとは精神的にも高度な進歩をとげた。
人びとは美徳についてだけ考えを集中し、それ以外の低次元の想念を起こさなかった。愛と調和のもとに美しく豊かな生活が展開し、人間はすぺて大宇宙の神の子であるという思想によって生きたために、地上は楽園そのものだった。科学もすばらしい発達をとげ、人びとは反重力航空機でどこへでも自由に旅ができた。彼らはスポーツや芸術を楽しみ、美しい都市を建設して、理想的な世界を築きあげたのである。
■ NASA(米航空宇宙局) |
■核融合炉 |
■ルビー・レーザー |
アメリカ合衆国の非軍事的宇宙開発活動の主体となっている政府機関で、1958年に設立された。アポロ計画、スペースシャトル計画なども、NASAによって推進された。 |
水素、リチウムなど質量数の小さい原子核を反応させ、より重い原子核に融合させるために用いる装置。融合にあたり巨大なエネルギーガ放出されるため、装置の建設は困難である。 |
波長がきわめて短いマイクロ波を人工的に増幅した指向性の強い光線をレーザー光という。ルピー・レーザーとは、その発振材料にルピーの結晶を用いたものてある。 |
■ 3度の大変動の後に沈没
だが、このような理想的な時代がいつまでも続いたわけではない。ケイシーのリーディングによれば、アトランティスの歴史のなかには3度にわたる大変動が見られるという。
まず紀元前5万年前、自然の激変によって大陸の一部が失われた。しかしアトランティス全体の文明にはそれほど影響はなく、文明は栄えつづけた。
2度目の大変動は、紀元前1万5650年に発生したと、ケイシーはひじょうに細かい数字まで算出している。じつは、この2度目の大破壊によってアトランティスのエネルギー・システムは異変をきたしたのである。
「太陽光線の放射活動が大きな影響力を与えるようになり、破壊的な力が生じて、その結果、地球内部の力と結びついた」とケイシーは述べている。つまり巨大なエネルギーが地下のエネルギーに放射されたために火山活動が続発し、大陸の一部が海中に沈下したのである。
ここに至ってアトランティス人たちは、国外への脱出をはかるようになった。多数の人びとがヨーロッパや中南米へと移民したが、大陸に残って復興作業のために働く者も多かった。黄金時代のエネルギー・システムがまだ稼動したからだ。しかし、その様子はちょうど戦後の日本のように、物資が極端に不足した時代であり、当然、人間同士のいがみあいもしばしば起こるようになった。こうして地上最大の楽園アトランティスはしだいに衰退へと向かったのである。
■ 社会が分裂する
「アトランティス末期には、自然力を応用する力がしだいに衰えて、人びとは身体の装飾への欲求や、飢えを満たそうとする欲求、失われた物資を補完しようという欲求を満たすことができなくなった」
世界最大の楽園アトランティスのたそがれについて、ケイシーはこのように述べている。
そしてついにアトランティスの社会は、3つの階級に分裂した。高位の僧を含む支配階級、中間の知識階級、農民や労働者の下層階級である。当然のことながら、支配階級はきびしく取りたてた税金によって、宮殿や寺院でぜいたくな生活を送っていた。いっぽう、労働者は重税に苦しみ、都市も農場も荒廃するばかりであった。それは中世の封建的な社会とよく似ている。 かつての平等や公平は失われて、貧富の差がはげしくなったのである。
もちろん、支配階級のなかにも、こうした社会のありかたに疑問をさしはさむ者もいた。彼らは集まって会議を開き、さまざまな対応策を打ちだしたけれども、反対派の妨害にあって成功しなかった。これらの善き人は、ついに国内での和平工作をあきらめて、海外移民のための探険隊を各地に派遣した。
■ 堕落したアトランティス
「アトランティスは、紀元前l万700年ごろに腐敗の極に達した。不義、密通がさかんになり、邪悪の神へのいけにえが捧げられるようになって、わずかに残っていたエネルギー・システムは拷問や懲罰に利用され、民衆にとっては恐怖の水晶石(ツーオイ石)となってきた」
もはやアトランティスは堕落への一途をたどりつづけた。それは現代文明の行きつく先を見るかのような、耐えがたい惨状であった。人間はエゴのかたまりと化して、自己の欲望の追求のみに生きるので、大自然と一体化しようという精神は失われていた。そのため間近に忍び寄る自然の大変動という報復に対しても、まったく盲目になっていた。そして、ついに3回目の大変動が襲いかかった。アトランティスの沈没である。
ただし、ケイシーによれば、それはプラトンのいうように一日と一夜にして起こったできごとではないという。火山の爆発、大地震などが相次いだ末に、大陸は大地震にみまわれ、しだいに海中に没しはじめたのだという。多くの人びとは国外に逃れることができたが、死んだ人もたいへんな数にのぼった。こうして紀元前9500年までに、栄光に輝く歴史をもったアトランティスは地上から姿を消してしまったのである。
ケイシーのアトランティスに関するリーディングは、おおよそ以上のようなものであるが、もしこの記述が正しいとなると、プラトンの伝えるアトランティス像はかなりゆがめられたものだということになる。だが、いずれにしてもアトランティスという大陸が存在して、繁栄をきわめた後、海中に没したという点では一致している。それゆえ、大昔にこのような大陸が存在したのは事実であると考えてもまちがいないだろう。ちなみにケイシーは、プラトンの記述を読んだことはないといわれている。
■ ケイシー・リーディングの矛盾
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▲ケイシーが催眠状態で口にしたリーディング14,256件を収めたマイクロフィルム。 |
ところで、アトランティス大陸から移民したり逃亡したりした人びとがいたはずだ。彼らは、 いったいどこへ行ったのだろうか。これについてのケイシーのリーディングをひもといてみよう。それによれば、エジプトにおもむいた人びとは、紀元前1万500年ごろにピラミッドの建設をはじめたという。さらに1万300年ごろにはアレキサンドリアに図書館を建てたとケイシーのリーディングは伝えている。しかしながら、これでは従来の考古学の学説との間にかなりのくいちがいが生ずる。エジプト最古の階段状ピラミッドがサッカラに建てられたのは、古王国の第3王朝ジュセル王の時代、つまり今から約4000年前といわれているからである。
また、アレキサンドリアの図書館にしても、歴史的には紀元前305年から紀元前30年、つまり女王クレオパトラの死までの間、存続したということになっている。これについても約1万年におよぶちがいがある。これをどう説明すればよいのだろうか。
さらにケイシーによれば、アトランティスからメキシコにたどりついた人びとは、古代ユカ タン半島のマヤ族として知られるようになり、北米にのがれた人びとはのちのアメリカ・インディアンの祖先になったという。
ところがこれに対して、アトランティスと同時代に海中に没したムー大陸の研究家ジェームズ・チャーチワードによれば、メキシコの古代マヤ人やアメリカ・インディアンの祖先はムー大陸から脱出した子孫であるという。 チャーチワードは、雷や透視にたよったのではなく、みずから世界中を歩いて古い記録を集めた研究家であるから、こちらのほうが信憑性があるように思われるのだがー。
もちろんケイシーのリーディングも無視するわけにはいかない。彼の予言の適中率はひじょぅに高く、実際にその霊能力によって病気を治療したりもしていたからである。ただし晩年のリーディングは当たらなくなったともいわれている。はたして真相はいかなるものなのだろうか。
■ アレキサンドリアの図書館 |
■ クレオパトラ |
紀元前300年ごろ、アレキサンドリアにあったとされる古代世界最大の図書館。60万巻におよぶ貴重な書物を収めていたといわれる。 |
古代エジプト、プトレマイオス朝最後の女王。在位は紀元前51年から30年。ギリシア系の女性ですくれた教養と美ぼうで有名。アントニウスとの悲恋は多くの文学に語りつガれた。 |
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