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| ├ 写 真 |
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| 大洋の怪物 大ウミヘビ 星香留菜 | |
第2部 大洋にひそむ神秘 |
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| 大ウミヘビの目撃事件は現代にいたるまで続いている。次にあげるのは、冒頭のグロスターの事件と並ぶ19世紀の信びょう性の高い事例だ。 |
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学研ポケットムー 『世界の未確認動物』 第5章より転載 |
軍艦デイダラス号の乗組員が目撃 1848年8月6日午後5時、東インド諸島へ向けて航行中のイギリスの軍艦デイダラス号は、巨大な未知の怪物と遭遇した。同艦のピーター・マタヘイ艦長は、イギリスに帰国後、次のように証言している。 「"艦長、海上におかしなものが見えます"という部下の声で彼の指さす方向を見ると、巨大なウミヘビが船の横を泳いでいた。ウミヘビは肩のあたりから上を海面につきだし、頭のてっぺんは海面から1メートルほどの高さにあった。全長はゆうに18メートルはあり、見えるかぎりでは体のどの部分も動かさず、まるで海中をすべるように進んでいた。ウミヘビは艦の横をかなりの速さで泳ぎ、まもなく艦を追いぬいていったが、距離が近かったため、肉眼でその特徴をはっきり見ることができた。胴の太さは約40センチ、頭の形はヘビそっくりだった。体は茶褐色で、ノドの部分だけが黄色がかった白、ヒレのようなものは見あたらず、背中に馬のたてがみもしくは海草のようなものがあり、海水に洗われていた」 このとき、大ウミヘビは約20分間にわたって目撃されたが、その間いちども水中にもぐらなかったという。甲板にいた艦長以下7人の乗組員はかわるがわる望遠鏡をのぞいて大ウミヘビを詳しく観察した。 この報告は、大ウミヘビの目撃スケッチとともに海軍省に提出され、同年10月10日には『タイムズ』紙に、同28日には絵入り新聞の『ロンドン・ニューズ』に紹介されて大評判となった。
だが同時に、学者たちから反論の火の手があがった。口火を切ったのはイギリス王立解剖大学のリチャード・オーウェン教授で、海軍軍人たちの見たものはウミヘビではなく、アザラシかセイウチのような哺乳動物だと主張した。おそらく、エサを求めて南氷洋から氷塊に乗って北上してきたのだろうというのだ。 たしかに、問題の大ウミヘビのスケッチを見ると、その顔はアザラシに似ていなくもない。しかしマクヘイ艦長は怪物の体長は18メートルあり、ヒレはなかったと証言している。とてもそんなアザラシは存在しない。 イワシクジラや大きなヤリイカの誤認だとする説も出たが、距離が遠く離れていたならまだしも、航海の経験の深い彼らが間近に出現したその生き物をクジラやヤリイカとまちがえるはずはなかった。 また、怪物が体をまっすぐに伸ばしてまるで硬直したように海中を進んだという証言から、それは生き物ではなく、海に流れ出した無人のカヌーだというものもいた。事実、カヌーの地先に動物の顔が掛かれることはあった。だが、それならばなぜ漂流しているだけのカヌーが軍艦を追いぬいて走ったのか? そして7人もの海軍の軍人が望遠鏡で観察したにもかかわらず、それがカヌーであることにだれひとり気づかなかったというのだろうか? これらの反論にはいずれも無理があり、デイダラス号の目撃報告の反証となるどころか、むしろその実実性をきわだたせる結果となった。 大ウミヘビを写真に撮った 大ウミヘビ目撃事件の新しい例では、1964年にオーストラリアで起こった事件が有名である。しかもはじめて大ウミヘビの写真撮影に成功したのだ。
この年の夏、フランス人カメラマンのベル・セーレックとその妻、3人の子どもたち、それにベルの友人オングの6人は、オーストラリア北東部クィーンズランド州沖のホワイトサンデー島にキャンプにやってきた。 島についてすぐ嵐になったため4日間テントの中にとじこめられていたが、嵐が静まると一同は小型の蒸気船と手こぎボートで海に出た。 嵐のあとの空はウソのように晴れわたり、波は静かだった。やがて子どもたちが水深2、3メートルの海底に奇妙な物がいるのを見つけて大さわぎになった。それは全長20メートル以上はある大ウミヘビだった。黒色の皮膚はなめらかでウロコはなく、胴の太さは50センチあまりあった。 セーレックは船の上から写真を撮ったあと、友人のオングと2人でスキンダイビングの装具をつけて海にもぐった。じりじりと怪物に接近してその頭の数メートル手前まで近づいたとき、人の気配に気づいたのか、突然怪物が頭をもたげて2人に顔を向けた。青白い大きな目が2人をとらえ、大ウミヘビは口をバックリとあけ、ゆっくりと動きだした。
セーレックとオングはあわてふためいて海上に逃げ、後ろから追いかけてくる大ウミヘビをふりきって、なんとか蒸気船によじのぼった。海面すれすれに浮きあがってきた大ウミヘビは、しばらく船の近くを泳いでいたが、やがて向きを変えて沖の方へ姿を消した。終始船上から水中の怪物を見ていたセーレック夫人は、大ウミヘビの背中には長さ1メートル半もの大きな傷口があり、白い肉が見えたといった。前日までの大嵐で流木か何かにあたり肉を切り裂かれたのか、それとも他の大型海洋生物と争ったのか。 この事件は目撃者が身内や親しい友人に限られていたこともあり、大ウミヘビの写真もトリックではないかという疑いがもたれた。しかし、今日にいたるまでニセ写真だという証明はされていない。 現代の最新科学機器によって海の、とくに深海の調査が進むにつれ、未知の海洋生物の存在が次つぎと明らかになっている。その形態はときに奇怪であったりこっけいであったりして私たちを驚かせる。いまだに多くの未知を秘めた海が、また1枚ベールをめくるように、大ウミヘビの存在を明らかにしてくれるのはいつのことだろうか。 (星香留菜)
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