奇怪な火の玉の群れ
耕作された地域で、130メートル下方には谷があって、その底には流れがある。その流れから、約400メートルの高さの別な山の頂上にあるその農家へ斜面が続いている。
30年間くる日もくる日も彼女が知ってきた田舎の夜の暗黒の中で、彼女は"火"と呼ぶ物体を見たのだ。その物体群は消えたり現われたりした。そしてそれが接近するにつれてその動きを目で追っていた。物体群は谷の中に降りたり傾斜を昇ったりし、なさけ容赦なく農家の方へ近づいて、まもなく彼女の眼前に出現しておびやかしたのである。彼女は未知の現象のことを知らなかったのでその正体を見きわめようとした。
「あらしはなかった」という。彼女は超自然的な物または途方もない物を恐れなかった ― こんな物を考える力はないのだ。しかし火事という考えはあらゆる土地の人をひどく恐れさせる。そこで助けを求めようとして息子を呼んだのだ。そして、やってくるかもしれない物を恐れてたっぷりと着込んで寝た。これは真実らしい響きをもつ話である。
奇妙なのは、かなく遠方から森、畑、生垣のような障害物を越えて、この光る"球体群"がやってきたことである。しかも不可解な目的でこの農家を目指してきたのだ。何かの意志、本能、知性があるといえるのだろうか。実体がなく、ただ光るだけで、機械でもなくプラズマでもなく、その行動が不合理で自発的な一種の鬼火みたいなこの物体について詳細はこれから展開する。
娘婿の話は続く。彼はこの家のあるじで、農業を仕事としている人なのである。
― おばあさんがあんたを呼んだときには、あんたは2階の次の部屋にいたんでしょう。ひとつ目撃した物について話してくれませんか。一体どういう事が起こったの?
「おれは窓の所にいた。そのときは何も見えなかった‥‥何もね。2、3分じっとしていた‥‥するとあっちの方に1個の火の玉がいるのを見た。家から15メートルの所だ!おれはいった。『ばあさん、あんたのいうとおりだ ― これはおれの義母なんだがね ― あんたのいうとおりだよ!』とね」
「それは家の近くで、壁のそばだったんだね?」
「そう、15メートルむこうだ」
「その物体はそこで何をしていた?」
「ああわからんね。そのときは動いていなかった。‥‥2、3分間じっとしていた‥‥それからもう何もないんだ‥‥。パチンと音がしてライトを消したように見えた‥‥もう何も見えなかったよ」
― 消えてからまた現われるまでは長くかかったのかね?
「いや、数秒間だ‥‥2、3秒だけだ」
― 形は丸いといったね。
「そう、丸い‥‥うん‥‥下よりも上の方がもっと丸かったな‥‥下側は少し平らだった‥‥上はあんたの絵よりももっと丸かったんだ」
われわれは相手の指示どおりにスケッチを修正した。
― そのとき外に出たのかね?
「うん、おれは外へ出た‥‥見に行ったんだ‥‥そこへね」
彼はあとでブドウ畑の中の立って見ている場所へわれわれを案内するという。農家から50メートル西方の地点である。
― 何か起こったのかね?
「おれは1分間ほどそこにいた‥‥1分間だ‥‥その火の玉群は引き返していた‥‥そのときは6個いたな」
6個の球体がいたというの?「そう ― 約1キロメートルむこうにだ ― たぶん1200メートルかな‥‥それらは畑の中へ引き返して行った‥‥うまくいえないな‥‥とにかく畑だ、畑だ」
シャセーヌ氏がもっとも正確な言葉で質問すると、彼は斜面の側面にある正確な場所を指摘することができた。われわれが立っていた場所から見ると牧場のように見える。
「その火の玉たちはかなり離れてタンしていた‥‥ここからどう話したらよいか‥‥正確には見えなかったんだが‥‥たぶんたがいに50メートルずつ離れていたかな‥‥ちがうかもしれないが、わからない。だがおれはみんながむこうへ動いて行くのを見たんだよ」
この男の息子が手紙で知らせたところによると、球体群はたがいに十メトルずつ離れていたという。彼はインタビユ-のときに口をはさんだが、父親は同意しなかった。要するに球体群は十メートル、以上、5十メートル以内の践離を保ってい、たらしい。「突然‥‥ああ‥‥それらは歩行の速度で動いて行った‥‥トラクターのスピ-ドぐらいだね‥‥トラクターといってもローギヤーのことだ」
― 1列にならんでいたの?
「そう、1列にならんでね」
― 6個の球体が1列にならんでかね?
「そう、1列にならんで ― それらはあそこで円陣になっていたよ」
― 1列になって?
「うん、1列になってだ。ならんでね」
― それらがむこうへ動いて行ったときもやはり光り続けていたの?
「そう ― そうだ」
― それとも、光が消えてからまた光ったのかね。
「いや‥‥それらは円陣になって、みな光っていたよ」
― むこうへ動いて行くときも光続けていたんだね。
「むこうへ動いて行くときも、そう・・・・むこうへ動いて行くときも光っていたんだ。おれはトラクターといったが、音はなかった。もしトラクターなら聞こえたはずだ。だって夜間は遠方のエンジンの音が聞こえるからね‥‥だがおれたちには物音は聞こえなかった。トラクターじやないな ― おかしいね・・・・だが、そんなに多くの、とにかく ― そんなに多くのライトがあるはずはないよ!すると、ある瞬間に‥‥それがつながって‥‥消えて(このとき息子が父親に何かをささやいた)砲弾型になったんだ」
― その砲弾型の物はもう見なかったのかね。
「いや、いや・・・・おれはその前にも見ていたんだ」
― いつ?
われわれはこのことを知っていたが、話の筋をこわしたくなかったし、関心を低めることも望まなかったのである。
「おれがちょうど外へ出たときだ」
― やはり同じ方向かね。
「そう、そちらの方だ」
― どんなふうに見えたかね。
「そうだね‥‥光っていたな‥‥光っていた。おれは木が燃えていたと思ったんだが‥‥炎も‥‥煙も見えなかったよ」
― 白かったの?
「輝いていたね」
― 火球の群れと同じ色?
「そう、火球の群れと同じ色だ‥‥似ていたな‥‥そうだ、同じ色だ」
それから火の玉はまた合同したのかね。
「うん、あの"機械"にね」
あらゆる事柄が正常なように思われる ― まずまずだ。その"火の玉"群は"砲弾型機械"の中にのみ込まれてしまったので、頑をひねりながらも見あきた目撃者は、火事の危険がないことを知って、このものすごい光景に驚きながら家へ帰って味についた。
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