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 バレイアに出現した怪人 第1話 ウルヴィオ・B・アレイショ

UFOと宇宙哲学の研究誌 NewsLetter No.39 1969 より転載

<アレイショ博士はブラジル、ミナスジェライス州の州都ペロリゾンテにある未確認空中物体調査センターの会長である。>

1967年9月14日正午12時頃に、ペロリゾンテの警察本部へ行けという電話があった。行ってみると公安委員ダヴィット・アザン博士が若い学生のファビオ・ジョゼ・ディニズをわれわれ前につれてきた。彼はきわめて感情的な反応を示しながら、典型的なショックまたは恐怖の様子をあらわして、約1時間前に発生した事件を説明しようとしていた。彼から一応の説明を聞いたあと、本人の興奮状態が少し静まったとき 本人と一緒に警察の車に乗ってバレイア病院付属のフットポール競技場へ行った。すでに教えられていたことたが、そこが事件の発生の場所なのである。

本人の説明

ファビオ・ジョゼ・ディニズ(16才)の話によれば次のとおりてある。彼は9月14日火曜日のおよそ午前10時20分頃バレイア病院付近の”バレイア”バス路線の終点に着き、そこから病院の最端建物にむかって徒歩で前進した。そこで金属製の窓シャッターを売ろうと思っていたのである。

2列のポプラ並木にはさまれたアスファルトの小道を静かに歩いて、くだんの建物に着く途中にあるフットポール場の反対側へ来た。そのとき競技場のまんなかに、ざっとキノコ型の奇妙な一個の物体が存在しているのに注意を引かれたのである。

▲第1図
▲第1図 a=ドームの平たい底部から出る赤黄青の断続的な光。 b=黒い中央円筒の周囲を動くガラスのカーテン。円筒に出入口があるのが見える。c=ドームの径:20m

珍しそうに彼は近寄って行った。志願兵徴募週間と関係のある何かの試みだと思ったのだ。すると突然、かすかなぼんやりした物音と共に丸屋根の外周からガラス製らしき透明なスクリーンが地面に降りてきた。このスクリーンを透してむこう側に一種の円筒形のものが見えたが、これか球状のドーム型丸屋根の土台となった。何とも説明のしようのないやり方で円筒中に、底部から上にむかってゆっくりと穴が開いてくるのが見えた。それを通りぬけて2人の奇妙な人間が並んで現われた。その瞬間ファビオはあとずさりしたか、次の声が彼を元へもどしたという。

「逃げるな!元へもどれ!」

相手から約5メートルの所で奇妙な人間と直面しながら、その1人が円筒の周囲をぐるりと一周するのを見たが、他の1人が完全なポルトガル語でファビオに言った。「明日ここへ来い。来なければおまえの家族をつれて行く」

▲第3図
▲第3図

先の1人が一周し終わって発言した人間と一緒になったので、ファビオはそれもながめることができたが、その男は右腕に一個の器具を持っているのがわかった(第3図)。それは武器のようにファビオに向けられていた。すると発言した男がドアーの方へ向きなおり、仲間に円筒中へついて来いと合図した。2人がドアーの暗黒中に消えるとドアーはしまり、透明のカーテンがもと降りた場合と同じキイキイという音をたてて元の場所へ上かっていった。アラポンガ(ハサミとぎ)という名で知られているブラジルの小さな茶色の鳥の鳴き声に似たその物音は完全にやんだ。すると物体はゆるやかな無音の垂直運動を始めた。恐れてファヴィオが逃げ出しながらそれをチラリと見たら、最初ふり向いたときは傾いたままなおもゆっくりと飛んでいたが、二度目にふり向いたときは物体はすでに消えていた。

怪人の容姿

怪人たちは身長2メートルから2メートル10センチで(第2図)人間の形をし、人間の体つきをして、頑丈な体格であったという。頭から足までダイヴァーの服に似た緑色のピッタリした服を着ていたが、見えた部分は緑色の皮膚の顔のところだけで、2つの大きな丸い目が左右大きく離れてついていて、白眼の部分は見えない。濃い3角形のマユがあった。口と鼻孔は見えないが、これはヘルメットの前部に黒い物が横に張ってあって、それが鼻や口を覆っていたからだ。

▲第2図
▲第2図

この”覆い”の底から胸にたれさがったチューブがあり、右足のかかとまで続いて背中へまわり、首のウナジへと続いている。カカトハは奇妙な工合にふくらんで、両手の各指は体と同様に服で包まれていたけれど、太くて指の数か4本のようだった。ファビオが気づいた2人の人間のあいたの唯一の相違は、発言した男でリーダーとおぼしき者の頭から突き出ているアンテナと、他の1人が持っていた”武器”であった。

ファビオは怪人たちの動作がゆったりとしているのに注目した。長く速い大またの歩行、地面から非常に高くもち上ける足。カカトの底には一種の”鉄のカカト”を付けているように思われた。歩くにつれて草地を平らにしたのだ。

物体に関しては4つの部分から成っていた。すなわち(1)球状の丸屋根と(2)茶色の(3)丸窓に似た1列の穴のある(4)直径20メートルの球型のドームである。丸窓(複数)の付いたこのドーム型の丸屋根は着陸の瞬間に回転しているように思われた。丸屋根の平らな基部には赤、黄、青の輝く光線があって、それらが断続的に光っていた。物体の円筒の部分は黒くて光っていて、巾が3メートル以上で高さが2メートルルを越えるほとだった。その巾のちょうどまん中にあるのはドアーで、ドアーの奥には何も見えない。ガラスのカーテンのように見えた物は全く透明で、わん曲しているにもかかわらず反射はしなかった。丸屋根の最上端中央部に、ファビオの方を指しながら、水平な3角形の突出物があり、それはドームが回転しているあいだ静止していた。

ファビオの断言によれば、物体が離陸した後に彼はバス停へ走って行き、家へ帰って恐怖の事件を母に語ろうと思ったが、バスに乗ってから母の健康状態を考えて警察へ行くことにきめて、事件発生後約45分してから警察署へ行った。 ざっと以上が少年の陳述である。このテープ録音による説明は第2次的細部に関する詳細を提供するだろう。

根本的仮説

調査を行なった上で種々の説からとられた憶測は、順当にいって最も単純な根本的仮説である。つまりこの事件は経験上の観察かまたは論理的な推理に最も矛盾しない物事である。まず少年の物語に関する右の最も単純な解釈はわれわれに主観的なように思われた。この分野においては2つの可能性か調査されねばならない。すなわち、”意識的”な空想の可能性であり、それはこの場合にはインチキやトリックと同じである。さもなくばそれは錯覚または幻覚の過程を含む”無意識な空想”で、錯覚とするならば率直にいえば精神病の気味がある。

主観的な憶測を排除または軽視することになれば、必然的に残りの憶測が優勢となる。つまりこの事件は客観的真実を有していたとい憶測である。

1.資料の蒐集

(A)現場の調査と土地の状況

資料の蒐集はわれわれが警察にいたあいだにこちらの最初の尋問によってただちに始まったが、それは現場へ行ってからも続いていた。その場で、公安委員のダヴィッド・アザノ博士とその助手たち、車の運転手やわれわれの面前で、その学生は現場の状況を再度説明し、しかもまたもや激しい感情的反応を示したが、2人の怪人がUFOから出て来る部分の説明をするときは特に感情的になるのだった。

乾いた地面や枯れきった草地で証拠を求めて探しまわったわれわれは、2つの小さなへこみを見つけたが、それは円形の弧状で、互いにかなりの距離をへだたってててついている跡だった。その一つの近くに大きなクツのカカトに以た形のへこみがあった。

ファビオの考えによれば怪人の1人の足跡てはないかという。たがこの足跡の性質はその可能性を確証できるようなしろものではなかった。 現場検証を行なっているあいだ終始近くの道路や大きな病院の電々窓々をも含めてあたり一帯は全く人通りが絶えていた。

バレイア病院はベロリゾンテ(ミナスジェイラス州の州都)の東方のバイルロ・・デサウダデ(思い出の地)として知られる郊外に位置する。そこはセルラ・ド・クルヲル(家畜の山脈)という名の山並の山腹にあるさびしい丘陵地てあり、病院は平たい台地に並んた一群のバラック建築物から成っている。小児結核患者用の病棟は主病棟群より約900メートル触れた南側の場所に孤立している。問題の病棟へ行くには繁茂した樹木が両側に植えてある大通りを行けばよい。その建物の前にそのポプラ並木の右手にフットボール運動場がある。あたりの地平線は山々と樹木から成っている。

(B)翌日の実地検証

翌月の午前10時に5名のメンバーと3名のオブザーバーから成る未確認空中物体調査センターの一団は、くだんの少年と共にフットボール運動場へ行った そこで2名の民間督警察警官と2名の憲兵の面前で新たに詳細をきわめた実地検証か行なわれ、その場面は映画や写真に撮影された。

現場の磁気に関して何かの手がかりを得ようとしてコンパスが用いられたが針は変化を示さなかった。ガイガーカウンターがなかったために放射能を測定することは不可能だった。

見たところ焦げた粒状の少量の物質がフットボール運動場のセンターライン近くで集められた。

病院の尼や職員が提供した情報によって、付近一帯のだれも少年の言う時刻に異常な物を認めた人かいないことがわかった。一方、問題の時刻には建物内の子供たも、従業員、守衛のすへては朝食か仕事のために屋内に集中していたことか明らかになった。

第2話へ続く

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