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 ネス湖の怪獣ネッシーを追う 第2部

学研ポケットムー 『世界の未確認動物』 第3章より転載 

怪獣が地上で目撃された場合には全身が見られていることが多く、正体を知る手がかりとしては非常に貴重なものである。しかし、当然ながら、目撃例の圧倒的多数は水上である。

▲1977年5月21日、午後4時。トニー・シールズは岸から100メートルほどの湖上に首をつきだしたネッシーを撮影した。体色は緑がかった茶色で首のあたりが白く、体の表面はぬめぬめと光っていた。
▲1977年5月21日、午後4時。トニー・シールズは岸から100メートルほどの湖上に首をつきだしたネッシーを撮影した。体色は緑がかった茶色で首のあたりが白く、体の表面はぬめぬめと光っていた。

●湖水監視人の接近目撃

これは比較的新しい話だが、ネス湖の湖水管理人を50年近くも務めたアレクサンダー・キャンベルは、6度にわたって怪獣を見たと報告している。湖の水面を監視するのが仕事だから、彼にとって目撃のチャンスが多いのは当然ではあるが。

あるときキャンベルは、ネッシーの背のコブと思われる物体が3つ並んで水面からのぞいているのを見ている。皮膚は象のそれに似てシワがよっていた。彼は長い監視経験から、これらが丸太やその他の浮遊物を見まちがえたのではないと断言している。

キャンベルは湖上監視員の仕事をやめてから、これらの経験を生かしてインバネス市に本社をもつ新聞『クーリユール』紙のセント・オーガスタス通信員となった。担当は、怪獣調査である。その結果、彼は1日中”ネッシー探しができることになり、ネス湖に巨大な生物がひそんでいることをいよいよ確認するようになったという。

彼の目撃の中でもとくに観察のゆきとどいた例は1966年5月のそれだろう。

その日の朝、ネス湖に流れこむオイヒ川の河口から湖面を見ていたキャンベルの視野に大きな生き物の姿が突然入ってきた。水中から巨大な頭部をつき出したのだ。湖畔には修道院の船小屋がたっていたが、その生物が現れたのは小屋から10メートルも離れていなかった。頭部の形は牛によく似ており、首の太さは直径30センチほどでキリンのように長く、体長は水中に没している部分を入れて想像すると8〜9メートルもあるのではないかと思われた。

キャンベルが息のつまるような興奮をおさながら目をこらしていると、その生き物は、首をねじってあたりを見回していたが、運悪く湖の下流の方から船が現れたため、急に水にもぐってしまった。あとにはゆっくりした渦巻きが残されたという。

すでに何度も怪獣を見ていたキャンベルだが、その彼にとってもこの時の目撃は、距離がかなり近かったことと、怪獣の外観や身のこなしがはっきりと見てとれたという点で前例のないものだった。

▲マサチューセッツ工科大学チームが撮影した水中のネッシー。
▲マサチューセッツ工科大学チームが撮影した水中のネッシー。

●ネス湖科学調査の成果

ネス湖の怪獣ネッシーについては目撃事例を列挙しているときりがない。冒頭に紹介した聖コランバから1982年までに報告された目撃件数はじつに1万件にのぼっている。このうち、別のものの見まちがいや作り話とみられるものをふるい落とし、信びょう性の高いものだけを集めても3500件に達するといわれる。

アメリカの未確認動物研究家ロイ・マッカル博士(シカゴ大学生化学部教授)はこれらの事例をさらに綿密に検討し、1871年から1969年までの目撃報告からもっとも確実とみられる251件を選びだして研究している。

科学的研究ということからいえば、現地にでかけ、直接ネス湖にもぐつて行った調査活動を無視することはできない。

1968年8月、イギリス、バーミンガム大学の電子電気技術学部長ゴードン・タッカーー博士は、同大学の2人の研究者とともに2種類の水中音波探知器を使ってネス湖の調査を行った。

湖の防波堤に設置された探知器が発する音波は、水中で固い物体に当たると反射して戻ってくる。音波が探知器に戻るまでに要する時間から、物体の大きさや物体までの距離をはじきだすことができる。こうして探知券のスクリーンは10秒ごとに湖の中の映像を映しだした。

▲氷河時代が終わった1万年前、海の水位が上がり、現在のネス湖のある場所への行き来は自由に出来た。その後水位が下がり、入り江となり、3000年前には陸地が隆起して湖となり、中にいた生物は閉じ込められたという。
▲氷河時代が終わった1万年前、海の水位が上がり、現在のネス湖のある場所への行き来は自由に出来た。その後水位が下がり、入り江となり、3000年前には陸地が隆起して湖となり、中にいた生物は閉じ込められたという。

実験開始から数日たった8月28日の午後、13分間にわたってスクリーンに驚くべき映像が現れた。防波堤から800メートルほど離れた湖の深部から、長さ6メートルあまりの物体が毎分30メートルの速さで浮上してきたのだ。その後物体は200メートルほど探知器とは逆方向に移動し、そこで向きを変えて、今度は防波堤の方向に同じ水深を毎分280メートルというかなりのスピードで進んできた。

だが、途中から水深を深めていき、600メートルまで接近したところでまたも浮上、やがて探知器に映らなくなった。ところが今度は、入れかわるように、防波堤から500メートルのところに第2の物体が現れ、非常な速さで深い方へと移動していき、まもなくスクリーンから姿を消したのであった。

2つとも、潜水や上昇の角度がきわめて大きく、その速度や大きさから考えても、巨大な魚やまたは魚の群れである可能性はなかった。

1972年8月には、今度はアメリカのマサチューセッツ工科大学のロバート・ラインズ博士のチームが、同じく音波探知器による調査を行った。このときは探知器と水中カメラを連結し、撮影圏内に巨大な物体が現れたら自動的にストロボがたかれ、55秒ごとに撮影が行われるような装置を使用した。そして8月8日早朝、カメラが作動し、長さ1・5メートルのひし形の、くじらのヒレのようなものが撮影された。

▲7000年前に絶滅したといわれるプレシオサウルス。水中生活を営んでいた。ネッシーはこの恐竜の生き残りだという説が有力だ。
▲7000年前に絶滅したといわれるプレシオサウルス。水中生活を営んでいた。ネッシーはこの恐竜の生き残りだという説が有力だ。

ラインズ博士は1975年にも同様の調査を行い、体長6メートルに達する首長竜のような姿と頭部だけの写真を撮影している。

これらの科学調査から判明したのは、ネス湖の水中には少なくとも”大きな動く物体が存在しているという事実だ。

ネス湖の地勢的な歴史を調べると、たしかにここに巨大な生物が生息していてもおかしくはない。候補に上がっているのは、太古の首長竜の一種、プレシオサウルスの子孫、特殊な進化をした巨魚、水陸両生の哺乳動物などである。

このうち、プレシオサウルス説にはかなりはっきりした舷継がある。この恐竜は、l億5000万年前から7000万年ほど前まで、つまりジュラ妃から白亜紀にかけて地球上に栄えた生物である。化石はイギリス周辺で数多く発見されている。

一方、最後の氷河期が終わった1万年以上前、ネス湖一帯は海の入江であった。その一帯は、後に陸地が隆起したため、入江は内陸部にとじこめられて湖になったのである。この時代に現在のネス湖周辺に生息していたプレシオサウルスも、当然ながら湖の中にとじこめられたであろう。そして外部の世界とは切り離されたまま、現代にまで子孫を残してきたことは十分に考えられる。

生物は非常に狭い地域の中だけで孤立して生息している場合が少なくない。その環境が急激に破壊されることさえなければ、単に年月によって滅び去ることは滅多にない。平均水深が200メートルにも達し、水がにごっているネス湖は、内部の生きものを保護する格好の環境なのではあるまいか。

(星香留菜)

■マサチューセッツエ科大学 ■首長竜 ■氷河期
アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジにある私立大学。通称MIT。各種の高等研究所が設置され、理工系としてはアメリカを代表する名門校である。 約2億年前から7000万年前の海に生息した巨大な絶滅爬虫類。ヘビのように長い首と海ガメのような櫂(かい)状の四肢をもつ。プレシオサウルス、エラスモサウルスなど。 地球上の気候が非常に寒冷になり、高緯度地方や高山地域て氷河が大規模に拡大した時代。地球誕生以来、数回にわたって到来、生態系に大きな影響を与えてきた。
  

  【付記1】

ニュー・ネッシー

1977年4月25日、日本の海洋トロ−ル船瑞洋丸(2455トン)の漁網が、ニュージーランド沖で正体不明の怪動物の死体を引き上げた。

1977年4月25日、日本の海洋トロ−ル船瑞洋丸(2455トン)の漁網が、ニュージーランド沖で正体不明の怪動物の死体を引き上げた。

死体は腐敗がひどくて船倉の魚に影響がおよぶ心配があったため、死体そのものはもち帰れなかった。

しかし、同船に製造担当主任として乗っていた大洋漁業の矢野道彦氏(当時39歳)は、数枚の写真を据影したうえに骨格測定図を作成、さらにヒレについていたヒゲ状の物質42本をもち帰った。

姿形が似ているところから、海生恐竜の一種プレシオサウルス(首長竜)の生き残りではないかとマスコミで齢がれ、だれいうともなくニュー・ネッシーという名前までつけられた。ネス湖の怪獣ネッシーのニュージーランド版ということらしい。

これに関して、東京水産大学の佐々木忠義学長が会長を務める「日仏海洋学会」では、その年の9月に各分野の科学者を結集、翌年8月に「瑞洋丸に収容された未確認動物について」という報告書を発表した。だが、ウバザメの腐乱死体説、爬虫類説、新種の動物説に意見が分かれ、結局はっきりした結論はでなかった。

一方、ロンドンの国立自然科学博物館の魚類学者グリーンウッド博士は、ニュー・ネッシーが報じられた直後に「新聞の写真から見て、この生物はクジラザメかウバザメだと思う」と指摘している。日本でも、東京医科歯科大学の永井裕教授などは、たんばく質の分析からウバザメの仲間ではないかと推定している。

   【付記2】

オゴポゴ

カナダのブリティッシュ・コロンビアにあるオカナガン湖には、古くから「ナティアカ」と呼ばれる怪獣がすんでおり、インディアンたちに湖の悪魔として恐れられていた。この怪獣は白人が移住してからも時おり姿を現し、「オゴポゴ」と呼ばれるようになった。

1926年7月19日、午前1時ごろのことである。妻と2人の孫を乗せて湖畔をドライブしていたジョン・L・ロギーという老人が「オコポゴ」を目撃した。静かな湖面が急にもり上がり7メートルぐらいの木の幹のようなものが姿を見せた。50センチほどの頭がついており、羊のような顔からとがった鼻がつき出していた。怪獣はすごいスピードで波をかき分けて進むので、車を飛ばしながら、しばらく後を追ったという。体にはウロコも毛も見当たらなかった。

「オゴポゴ」はこの年、レガッタ競技をしていた人びとの前に突然出現するなど目撃者が続出、11月には湖で集団洗礼式をしていた50〜60人の人びとの前に怪奇な姿をくねらせながら現れた。

「オゴポゴ」は第二次大戦後も信頼すべき目撃者が何人か登場しており不鮮明ながら1分間近い8ミリフイルムも撮られている。オカナガン湖は淡水湖で、広さや深さ、水温などがネス湖に酷似しており、すくなくとも未確認の巨大な生物がいることだけはたしかなようだ。

胴体を計む全体像の目撃者がいないため、「オゴポゴ」の正体についてはさまざまな推測がされている。

やはりもっとも有力なのはネス湖と同じく首長竜ではないかという推定である。最近になってロイ・マツカル博士は、ツーグロドンという鯨の原生種であると断定した。

ツーグロドンは現在の鯨よりも細長く、「オゴポゴ」の姿にそつくりだという。博士によれば、陸生動物からの進化の過程で、鯨もまず淡水にすんだはずだという。

 

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