|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ├ 写 真 |
| 中央アート出版社 TEL : 03-3561-7017 E-mail :info@chuoart.co.jp |
| ネス湖の怪獣ネッシーを追う 第1部 | |
学研ポケットムー 『世界の未確認動物』 第3章より転載 |
||
| 現代の未確認動物の中でネス湖の怪獣”ネッシー”ほど世界的に知られているものは他に例がない。それは、古来、数かぎりないほどの目撃証言が記録され、とりわけ第二次世界大戦以後は写真という「物的証拠」が残されていることから、当然というべきかもしれない。 |
スコットランド中部にあるネス湖(現地ではロッホ・ネスという) はイギリス諸島中最大の淡水湖である。この湖は谷を切りさくようにして延々37キロにもわたって細長くのびており、一方、幅はもっとも広いところで3・2キロ、平均すると1・6キロしかない。 谷状の地形のところに水がたまっているので、水深は非常に深く、平均200メートルにも達する。湖水は茶かっ色ににごり、水中の透明度が低いので、1、2メートルも離れると視界はきかなくなる。 このような特殊な湖になにか得体の知れない水中生物がすんでいるかもしれないと考えることはまったく自然なことだろう。まして多くの人びとがそれを目撃しているとなれば、あとは何とか確実な証拠をつかみたいと思うのが人間の好奇心であり、現代風にいうなら科学的探究心というものである。 この潮には千数百年もの苦から言い伝えがあった。巨大な怪物が夜中に水辺に上がってきて、近くに住む人間や家畜を湖底に引きずりこむというのだ。
記録として残されている最古のものは西暦565年にまでさかのぼる。それはアイルランドの聖職者聖コランバの伝記(作者はアダムナン)の中に登場する話である。 聖コランバはスコットランドの西海岸沖にあるアイオーナ島の修道院の出身で、スコットランド北部を歩き回って異教徒をキリスト教に改宗させていた人物である。 あるとき彼がネス湖の近くにやってきたときのことだ。土地の住人たちが死者の埋葬を行っている場面にぶつかった。聞けば、その男はネス湖に泳ぎにでて、水中から現れた怪物に襲われて重いケガをし、それがもとで死んだという。 その話を開いてから2年後、彼は従者をつれてふたたびネス湖の近くで布教活動をやっていた。彼らは湖の反対側に渡るため、まず従者が小さな岬のとったんまで泳ぎ、そこにつないであったボートを持ってこようとした。 彼はからだに腰布だけをつけ、ゆっくりと泳いでいた。すると突然、カエルのような姿の巨大な生き物が水中から姿を現した。この怪物は鼻から水をふきだし一呼吸したかと思うと、大きな口を開けて従者に襲いかかってきた。 これを見ていたコランバは、まったくあわてず、両腕を大きく広げて怪物に呼びかけるような調子で命令した。 「止まれ。その男に触れてはならぬ。すぐに立ち去れ!」 伝記によれば、「この声を聞いた怪物はおびえて、ロープで引かれるよりも早く逃げ、水中に沈んだ」という。少々うさん臭い話ではあるが、とにかくこの記述に近い出来事はあったらしく、以後コランバは新たに多数の信者を獲得したということである。 その後も、ネス湖怪獣話はくり返しスコッランドに登場している。19世紀になると目撃記録も具体的になり、真実味をおびてくる。1880年のダンカン・マクドナルドというダイバーの証言はその一例だ。 マクドナルドは、ネス湖の岸近くに沈没した船を浮上させようとしていて、この怪物にでわしたという。 「私は水中で沈んだ船にとりついていた。すると突然、しかしいとも静かに怪物が私のそばに近づいてきた。私には気づかないようだった。その目をちらっと見ると、小さくて灰色のいやな目だった。」
●陸上で目撃されたネッシー 20世紀に入ると、目撃事件はいよいよくわしく記録されるようになる。1923年にはネス湖の怪獣がはっきりと陸上で人間の前に現れた。 その年の4月12日朝のことである。湖の北側の道路をアルフレッド・クルックシャンクという男が車で走っていた。5時ごろであたりはまだ暗く、湖の水面はまったく見えない。ヘッドライトの明かりの中をときどき小動物があわてて横切る。
インバーモリストン村の北3キロほどにある丘の頂上まで来たとき、クルックシャンクは両のまなこをいっぱいに見開いて叫んだ。 「なんだあれは!」 車の前方数十メートルの、道がカーブしているところの外側に、世にも奇怪な動物がじっとうずくまっている。彼はその動物の前を通りぬけるとすぐに車を止め、外へ出てふり返った。 動物は全長が4メートル以上もあり、からだはぶよぶよしてふくれており、長い尻尾をたらしていた。顔はブルドッグの化けものさながらという醜さであった。 車に驚いたのか、この巨大な動物はオットセイのように前足2本でヨチヨチと歩き、牛のようなこもった鳴き声をあげながら湖水にとびこんだという。
この事件から10年後の1933年7月22日にも、陸上で怪物が目撃されている。 ロンドンの洋服仕立て屋のジョージ・スパイサーという男が妻をつれてスコットランドをドライブ旅行し(当時、車で旅行することは金持ちだけに許された楽しみだった)、その日の夕方、ネス湖畔の道路を走っていた。そのとき、彼らの目の前の路上に草やぶの中から太い木の幹のようなものが出てきた。 急ブレーキをかけて車を止め、手前の方から2人が観察すると、木の幹のように見えたのは、動物の細長い首で、そのあとに5、6メートルもあろうかという巨大な胴体が現れた。たしかに動物ではあるが、むしろ怪獣と呼ぶ方が似合うグロテスクな姿であった。
怪獣は体をくねらせながら道を横切ったとみるや、かん木の茂みを抜け、湖水に入ってしまった。道路の反対側の森で何か獲物を捕ら、え、しっぽで巻きこんでいたように見えた。 巨大な怪獣の出現にぎょうてんしたスパイサー夫婦がその場を急いで離れるように車を走らせると、向こうから自転車に乗った男がやってくる。土地の人間だと思ったスパイサーは彼に先刻の出来事を話した。しかしその男は、すぐには信じられないという顔つきをし、それでは現場にもどってみようではないかということになった。 あと驚いたことに、道路わきの雑草はローラーで押しつぶしたようになぎ倒され、その跡は湖水までのびていた。この出来事は、歴然とした証拠が残っている目撃事件として、当時のイギリスでたいへん有名になったのである。 >>第2話へ続く |
|
|