隕石の衝撃か、火山か
レインジャー7号が最初に科学者の頭を悩ませたのは、大気のない惑星に予想されるギザギザの地形のかわりに、起伏の多い砂漠地帯のように見える表面が示されたことだった。
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▲サーベヤー7号が撮影し月面のパノラマ写真。 |
サーベヤー1号は月面の嵐の太洋に着陸したが、送って来た写真類は、水のない地球の土地に似た月の地面を示していた。
サーベヤー5号はあるクレーターの頂上部近くの静かの海に着陸した。化学分析した結果、月の土は地球の海底の岩や山の尾根などを形成する一種の玄武岩であることがわかった。また月の表面が隕石だらけとしては、帯磁地質の量が不足していることも判明したのである。
サーベヤー6号は5号と似たような結果を報告し、化学的な成分が月の海に共通していることを科学者に信じさせることになった。
サーベヤー7号は月の高地帯に着陸し、分析の結果、海の部分の玄武岩よりも密度の低い物質が発見された。しかもサーベヤー各号全部は、月の最も豊富な元素は地球と同様に酸素とシリコンであることを発見したのである。したがって月は隕石の源泉ではなくて進化した惑星であると断定された。だが、そうだとしても、火山活動を暗示する海の部分の玄武岩の正体については、隕石の衝撃説をとる学者たちにたいして「自分たちは間違っていた」と確信させるには至らなかった。
その結果、衝撃説と火山説は、サーベヤーの実験が終了しても科学者間で未解決のまま残ったのである。
月の謎のガラス質
宇宙飛行士二−ル・アームストロングは小さなクレーター(複数)の底にガラス質の小地面を確実に発見している。これについて天文学老のトーマス・ゴールドは、月は太陽の急速な燃え上がりで焼かれてきたのだという説を出した。
ここで一つの謎が生じた。この小地面は明らかに微小隕石や太陽の微粒子の連続直撃を受けた形跡はないからだ。加うるにガラス状のつやは月の土の突出した部分の頂上や側面についているのだ。ゴールドの推測によると、太陽の急速な燃え上がりは三万年足らずの昔に発生したもので、わずか10秒ないし100秒間続いただけだという。
ここに二者択一のもう一つの解釈がある。3万年足らずの昔に、洗練された武器が用いられて、月面を直撃したのではないかというのだ。無キズのまま残っているガラス状の小地面は、微小隕石が地表に達していないことを示している。したがってその隕石類は濃密な大気中を通過するときに停止するにちがいない。
以上は月の浸食作用の隕石落下説をくつがえし、月の地球に似た大気と引力の存在を証拠づけるものである。
アポロ11号の着陸地点は赤道付近の静かの海という低地帯であった。ここは月のごくわずかな気候の存在する地域で、ちょうどアメリカ南西部に似た所である。そこでは軍が軍用機を多年放置していたが、機体がさびることはまずなかった。月面のこのような地域なら器具を長く置いても無キズで残るだろう。比較的静かな空気は地面を傷つけないし、大抵の隕石が大気をつらぬくことは不可能だろう。
クレーターは火山活動が原因ではない
『不思議な月世界』の中で著者のファーソフは次のように推理している。月のクレーターの火山説は実証するのがむつかしい。月には火、煙、灰、溶岩などの証拠が多くないからだというのだ。月の表面は多くの点で地球に似ているように思われるので、火山活動の時期はほとんど終わっているにちがいないと結論づけるのは合理的である。丸い地表、風雨にさらされた外景、広々とした海などは、火山活動が月面の重要な要素ではなかったことを示している。
もし火山活動が続いていれば、をだらかを海を傷つけて、もっとギザギザの外観を生ぜしめただろう。確認し得る地球に似た特長の多くは、表面に点在するクレーターによって削られてきたので、クレーターそれ自体は火山活動による隆起の期間に造られたものではない。クレーターは表面の状態が安定したあとで造られたはずである。
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▲ドン・ウィルソン氏の『われらの宇宙船・月の秘密』の原本 |
『われらの宇宙船・月の秘密』と題するドン・ウィルソンの著書の中で、著者は『アポロ17号の予備科学報告』と題するNASA(米航空宇宙局)の刊行物に言及している。それによるとアポロ17号から引き出された結論は次のとおりだ。
充分な証拠が積み重ねられてわかったのは、過去30億年間における火山活動は実際上存在しなかったか、または極端に少なかったというのだ。これはさらに、月でしばしば見られる光点は火山の噴火によるものではないという証拠を提供することになる。
以上を分析してわかるのは、月の広範囲なクレーター群の多くは火山活動や隕石で生じたのではないだろう、ということだ。こうしたクレーターのほとんどは、明らかに表面が地球に似た外観をもつ成熟した状態に達した後に生じたのである。月には広範囲な気候や水で満ちた海洋などがあったにちがいない。信頼し得る月の歴史や起源に関する概観は後の章で述べることにする。
月の異常な反響
月の地殻や内部の構造の性質をつきとめるために地震の実験が行われたことがある。月探査機やアポロ飛行士たちによって、感度の高い地震計が月面に設置された。月着陸船やその他の物体が月に撃突したとき、衝撃波が記録され、専門家はデータを解析できた。
その実験の結果は科学者の予期しないものだった。アポロ11号の地震計は月が比較的静かであることを示したのである。ある科学者たちにとって、このことは月が、大きいというよりはむしろ小さな溶けた鉄のコア(核)を持っていることを意味したし、他の科学者たちは月には全くコアがないと信じた。
アポロ12号は連続して作動するように設計された、もっとはるかに高感度の地震計を運んで行った。捨てられた着陸船が月の着陸地点から約64キロの位置で月面に撃突したあと、3個の長時間地震計が30分以上も続く連続した反響を記録したのである。
このことは月の構造がきわめて堅いことを意味した。なぜなら月は鐘が打たれたかのように響いたからである。科学者のなかには、月は内部にいかなる流動体も持たない固型物であると主張したのもいた。これは溶けたコア説にたいする別な一撃となった。月は空洞だという結論を出した科学者もあるが、これは引力説と一致しないように思われた。
ニュートンの法則の欠陥
月の強い表面引力は、ニュートンの万有引力の法則に重大な欠陥があるかもしれないことを示している。この欠陥は引力の真の性質を理解する最初のカギとなるものだ。
ニュートンが1666年にこの法則を初めて公式化して以来、引力の性質にたいしてただ一つの説も出たことはないし、学界が認めた説もない。ニュートンでさえも引力の性質を理解したとは言わなかったのだ。彼はただ落下する物体に及ぼす引力の影響を数学的にあらわそうとしただけである。ニュートンが仮定したのは、この謎の引力が何であろうとも、それはあらゆる物質に均一に作用し、それが地表下数千マイルも惑星という物質を貫通しても拡散したり弱まったりしないということなのである。
彼の説は、引力というものは物質の分子が空間のどの位置にあろうとも、あらゆる分子に関連を及ぼすものであるということをほのめかしている。
彼の万有引力の重大な欠陥と思われるものは、引力の影響は逆二乗法則によって弱まってゆくというだけで、相互に影響しあったり、拡散したり、影響を増大させたりすることなしに物質を貫通してゆくという彼本来の仮説にある(訳注=「逆二乗法則によって弱まる」というのは、距離の二乗に反比例して弱まってゆくという意味)。こうした影響がないのならば、引力を持つ天体の他の天体にたいする吸引力は、この二つの天体間に別な物体が存在してもそれに影響されないということになる。したがって引力はその物体にたいしていかなる力をも及ぼすことはあり得ないだろう。
だが引力は物質に力を及ぼすので、先に述べた各種の影響は存在するはずである。したがってニュートンの万有引力の法則はエネルギー保存の法則をおかすことになる。
力(複数)というものはエネルギーを要するので、引力を持つ二つの天体間に他の物体が入ってくれば、その物体から生じる別な引力の影響がない限り、エネルギーの相互影響を生じさせることになり、外側の二つの天体間の引力を減少させることになるだろう。
引力は貫通力の強い放射線?
引力の拡散は次のような場合に見られると思われる。山の上で鉛の重りを落とすと、それはニュートンの引力説でいうほどには地面に引き寄せられないのだ。つまりニュートンの法則に従っていないのである。これを地質学者は、山の内部にある物質の平均密度は海底下の物質のそれよりも低いからだと仮定することによって解決しようとした。
もっと真実らしい説明としては、山の内部の物質によって起こる引力の影響は、上層部の物質によって部分的に散らされるか希薄になるというのがある。これは各種の相違を説明すると思われる一つの要素である。
以上の情報や目の強い引力などからみて、引力というものは、きわめて貫通力の強い放射線によって起こると考えられるのである。それはかなりの深さまで物質を貫通するけれども、その能力はなおも限定されている。
地球の質量は正確に予測できない
万有引力が適用されるとすれば月の強い表面引力は、月としてはあり得ないほどの質量があることを暗示している。いま月の引力を地球の引力の64パーセントと仮定して万有引力の法則に従えば、月は一立方センチにつき13.0グラムの平均密度を必要とすることになる。これは鉄よりもほぼ50パーセント重い鉛の密度よりも大になるのだ。
地球と月のあいだの質量の中心をきめると、地球は月の質量の81.56倍も必要となり、これは一立方センチにつき21.5五グラムの密度となる。これは鉛の密度の約2倍である。したがって鉄のコア説でさえも質量の謎を解くことはできない。
ニュートンの万有引力の法則の欠陥が地球の鉄コア説をひき起こしたことを注目すべきである。一度地球の質量が仮定されると、月の質量もその表面で引力の実際的な力によって決定された。地球の地殻の限定された厚みだけが、地球の表面引力の大部分の一因であるというのは考えられることである。これはある深さの位置にある物質から発する引力放射線の拡散のためである。
このことは地球の質量は従来の方法を用いては正確に予測できないことを意味する。もし惑星が中空の中心部を持つとしても、表面引力は鉄のコアまたは鉛のコアさえあった場合とあまり変わらないだろう。これこそ月がその大きさの割に強い引力を持つ理由を説明すると思われるのである。これにより結論としては、ニュートンの万有引力の法則はまず第一に地球の質量を過大に算出していたということになる。
月は中空の天体か
地球の鉄コア説は、地殻の平均密度が地球全体の予測された質量を説明するのに妥当なものではなかった。地球の地殻は、一立方センチにつき322グラムという月の平均地殻密度にくらべて2.7グラムという平均密度を持っている。ニュートンの引力の法則を満足するには、地球の平均密度は5.5グラムでなければならぬ。このために月の平均密度は3.34グラムとなった。
月の表面密度と、予測された平均密度の総計とのわずかの差のおかげで、発見されたわずかを磁気の原因として、小さな鉄のコアが仮定された。これが今日行われているオーソドックスな月に関する学説である。前章では鉄のコアの存在説によらない別な説を用いて地磁気を説明した。
科学者は地球のコアに反射した衝撃波を測定することによって、地球の鉄コアの存在を確証したと信じている。しかし地球がもしも空洞の堅い殻であるとすれば、彼らは地球内部の大きな洞穴または内面からの反射をキャッチしたかもしれないのだ。
これと同じような実験が目にも行われた。そして衝撃波の測定の結果、科学者は月のマントルを発見したと確信した。しかしアポロの月面における地震の実験で得られた証拠も、月は中空で比較的堅いという結論を暗示している。
地球も鳴り響く
地球が月と同じように鐘を鳴らすような反響音を示すという事実は一般に知られていない。地球は月よりも81.56倍もの質量があるので、こんな結果を起こすには、はるかに大きな爆発または衝撃波を必要とする。
ジョーゼフ・グダヴュジはその著『占星学=宇宙時代の科学』 の中でこうした出来事について言及している。彼は1960年5月22日のチリ大地震の際中に鐘のように鳴り響く現象が記録されたと述べている。これは1881年に公式の世界中の記録が確立されて以来、記録された地震では最大のものと思われていた。
グダヴュジはフィンランドのヘルシンキで開催された1691年度世界地震会議で述べられたその地震の結果の解説をかかげている。
それによると衝撃はすさまじいものだったので、地球全体が鐘のように鳴り響いたという。この響きはゆっくりしたインパルスの一定した連続でもって、かなり長時間続き、これは各地の地震観測所で記録された。
またグダヴュジは1964年3月27日のアラスカ州アンカレッジの地震の結果として、またも地球が鳴り響いたと書いている。月が鐘のように鳴り響いたのを発見したときに科学者達がひどく恐れたというのは、やや信じがたい面もある。結局、地球も同じ性質を示しているのだ。
地球も空洞の天体か
月の空洞説はドン・ウィルソンが先に述べた著書で広範囲に調べている。その中でウィルソンは、ジョーゼフ・グダヴュジと、元NASAの地質学老で宇宙飛行士を訓練したファルーク・エル・バズ博士が行った『サーガ』誌のインタビューに言及している。
『サーガ』誌の記事に出たエル・バズによると、NASAの発見事のすべてが公表されたわけではないという。たとえば彼は月の内部には多くの未発見の空洞があり、それが地下の氷とともに存在するかどうかを調べるために種々の実験が行われたという。
ニュートンの引力の概念にたいして、月空洞説は何をしようというのだろう。それは有名をニュートンの法則によって予測されたものよりも低い月の質量を示すものである。それは先に説明した引力の制限された貫通力の証拠を提供するものだ。
最後に、月の空洞は地球が空洞であることを示唆するのである。これについてもっと証拠を提供する前に、もう一度重要なポイントを強調する必要がある。
すなわち科学者は地球=月システムの質量の中心を決定しているが、これにより彼らは地球の質量対月の質量の比を正確に算出している。すると問題は両天体(地球または月)のどちらか一つの質量を正確に決定することにある。しかし二つとも空洞であるならば、天体の体積を決定するために殻の厚さが知られねばならない。加うるに、空洞の平均密度と大きさも知られねばならぬ。気になる鉄コアがなければ、平均密度は地殻の密度にもとづいたものに近くなるが、しかし殻の厚さは多くの驚異的な地球の写真を用いても算出するのは困難である。次章で読者の研究用にこれらの写真の一枚をかかげることにしよう。
第9章(1)へ続く |