地球より古い月の岩石の年齢
調査してみると、おそろしく年代が古いのだ。大抵の石は4億年前後のもので、なかには5億年前のものもあった。ところがアポロ12号が採取した2個の石は、200億年も経過していたという!これはカリウムアルゴン法という測定法で検査した結果、判明したのである。鉱物内に含まれるアルゴンのカリウムに対する割合を出して鉱物の年代を測るのだ。
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▲アポロ12号の宇宙飛行士。向かって左側からピート・コンラッド(ジェミニ5号・ジェミニ11号・スカイラブ2号に搭乗、船長)、リチャード・ゴードン(ジェミニ11号に搭乗、司令船操縦士)、アラン・ビーン(スカイラブ3号に搭乗、月着陸船操縦士)。©NASA |
200億年というこの途方もない年代は、地球や太陽系の年齢より4倍も長い。そうだとすれば月は太陽系外で形成されたもので、それを地球のそばまで持って釆たということになる。
あまりに空想じみているといって笑う人があるだろうからアメリカの科学者ユーリー博士を引っ張り出すことにしよう。実は博士も"月拿捕説″を唱えていた人で、太陽系の生成以前に月が別な場所で創られたという説を打ち出していたのだ。したがって月の岩石が気の遠くなるほどの大昔にできたという年代測定結果は博士をよろこばせた。プルトニウム244の核分裂から生じるキセノン同位元素が月の岩石に含まれているということは、これが地球では見られない点からして地球よりもはるかに古い証拠になると博士は言っている。
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▲砂のサンプル採集器を持つアラン・ビーン(アポロ12号月着陸船操縦士) |
ごろごろと並んでいる月の岩石の年齢が、それぞれ大きく異なるという事実も不思議だが、もっと奇妙なのは、砂の年代が岩石と比較していちじるしく相違する事実である。アポロ12号が持ち帰った岩石の年齢は大部分36億年と測定されたのに、その岩石の雫の砂は46億年と出た。実に10億年からの差があるのだ。ということは、この砂は岩石が破砕してできたものではなく別な所から来たものではないかと推定されるのである。
とにかく月の成分が地球とはまるで異なる事実からみて、これが地球誕生時にそのボディーから飛び出た片割れでないことはたしかで、バシンとシチェルバコフが主張するように、遠い宇宙空間から一種の宇宙船として飛来する途中、隕石ひろいながら進行したとすればさなざまな時代層を通過したと考えられるのである。そのため年代の異る岩石が分布したのではないだろうか。
アポロ12号が持ち帰った土(砂)の年齢が、同じ場所にある岩石より10億年も古いということは、地球の衛星になる以前にどこかで億年の時代差を生じたにちがいない。
月の岩石中に含まれる元素類については解せないことが沢山あるけれども、奇妙なのは鉄を異常に豊富に持っていることだ。しかもこれは地殻の真下に厚い層をなしているのである。月は常磁性体だけで成っているのではく、鉄のような磁性体物質が多量に存在していることは、月震計による調査でも明らかになっている。少なくとも長さ1000キロ、深さ1000キロに及ぶある活性帯が2種類存しているのである。なぜこのようなベルトが交差もしないで内在しているのか?『サイエンス・ニユーズ』誌によると、この大ベルトは鉄のブロックのような物質から成っていて、それが無数に埋められているのではないかという。そのよう現象が自然に発生するものだろうか。
第10話へ続く |