最大の謎、月の振動!
しかし月に関して行われた具体的な調査で最大のミステリーは、月のボディーに発生する奇怪な振動であろう。
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▲アポロ12号が着陸した「嵐の大洋」の中の小山。©NASA |
1969年1月にアポロ12号は、月面の「嵐の大洋」に強力な月震計を設置した。月の地震は月震と呼ぶのだ。この月震計は地球で用いられている地震計よりも100倍も高感度なもので、人体の感覚よりも100万倍の感度を持つ装置である。
アポロ12号の月着陸船が司令船とドッキングし、切り離されて約8000キロ飛行したあと、月面上におかれた月震計から70キロの位置に激突したのだが、このときの衝撃は地球だったら小微動としてせいぜい2分間記録されるにすぎない程度のものである。しかし月震計はなんと55分間もこの衝撃波を記録したのだ!
NASAの科学者団は仰天した。しかも月震計がキャッチした記録の性質にまた驚いた。最初は小さな衝撃波で始まり、次第に大きくなって、それが信じられぬほど長時間続いたのだ!これは地球で観測される地震波とは完全に異なるものである。
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▲発射を待つアポロ13号。©NASA |
謎はこればかりではない。アポロ13号のサターン・ロケット・ブースターの使用ずみ第3段を月面に衝突させたとき、アポロ12号のコンラッドとビーン両飛行士が「嵐の大洋」に残しておいた月表計から140キロの位置に落下したのだが、この衝撃はTNT火薬の11トン分に相当するものだった。
ところが、この衝撃波は実に3時間2分も続き、40キロも深部に達したことが確認されたのである!
続くアポロ4号のサターン・ロケット・ブースター4段目も、リモコンにより月面に打ち込まれたが、これはまるで月全体が鐘のように鳴り響くという反応を示したのである。やはり3時間も振動を続け、40キロの深部に達したのだ。
なぜこうまで巨大な月震が発生するのか。いわゆる地球の熔岩とは異なる性質の物質が、海"に満ちているからではないかという科学者もいる。そこで例の2名は言う。月の内部には人工的な金属性の"船体″があり、その外殻は更に金属性の物質で覆われているのだと。
アポロ12号が残した自動送信機によって地球へ伝えられたデータを分析した科学者は、月の地表の成分は40キロ内部まで同一の結晶性物質であることを確認した。
コロンビア大学のゲリー・レーサム博士は、次のような月の内部の冷却説をとっている。「これは流体物がなく、溶解物もない証拠だ。月の中心部は地球と違って冷えており活性化していないのだ」
月震を起こした場合に謎となるのは振動の長時間ばかりではなく、衝撃波の伝播速度が異常に速い事実もある。「月震波の速度は24キロの深部までは次第に増大して、次に急速に上昇する。この上昇は高密度の物質に伝わるからだろう。約60キロの深さになると、速度は秒速約10キロと推定される」とフォン・ブラウン博士も述べている。いかなる物質がこのような高速で振動を伝えるのだろう。
第11話(終)へ続く |