1972年8月、ネス湖でのある午後、マサチューセッツ応用科学アカデミーの校長ロバート・H・ラインズ博士が2人の同僚をつれて、私が友人のウィング・コマンダー氏とキャリー夫人と一緒に滞在していたストローン市にやってきた。彼は望みの怪物−ネス湖調査探険船ナーウァル号が発した水中探知機音波をさえぎったという大きな動く物体−の水中カラー写真をちょうど手に入れたのだという。その物体は水中カメラに付けられたストロボを使用して写真撮影されたのである。彼はそのフィルムがアメリカで現像されて一流の専門家によって調べられるまでは、このことを秘密にしておいてほしいと頼んだ。
結局ことはうまく運び、記者会見が1972年11月1日にボストン及びマサチューセッツにおいて、電子電気技師学会、ボストン科学博物館、応用科学アカデミー、そしてネス湖調査局の後援のもとに行なわれて、その場で写真が公開されたのである。そのフィルムはイーストマン・コダック社で処理されてH・エガートン教授(マサチューセッツ科学技術協会)、H・ギレスピー氏(カリフォルニア科学技術協会)、L・キャッズ博士(アストロ・ダイナミクス社)、C・X・ワイコッフ博士(ウッズホール海洋学会)らにより分析された。
奇妙な付属物のある物体
そのカラー写真の数々は”濃い茶緑色のきめのあらい表面におおわれた大きな物体の一部分”を示している。(注1)写頁類中のある一群をみると、そこには5本の指をもっているように見える三角形をした一つの”付属部”が見られ、この一群の写貞を順次に見るならばその”付属部”はその物体の他の部分に関連して位置を変えるもののように思われる。これらの写責はナーウァル号で得られた水中探知機音波の記録と一致していた。
専門家は、写真中の”付属部”はカメラから少なくとも20フィートの距離があると考えた。「この”付属部”の全体の長さは写真群では6フィート、広さは最大部で3フィートはあり、水かきのようなものであるとの意見が出た。別の写真群については、広さは4フィートで長さは8〜10フィートと見積もられた」
報告書はまた「続く各写真は同様な広がりをもつ尾のような構造に似た別の付属部を示している(注2)」と述べている。
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▲1934年4月20日、ロバート・ケネス・ウィルソンが撮影したネス湖の怪獣。1993年11月、写真撮影に同行したクリスチャン・スパーリングが、90歳でなくなる直前、模型を使ったトリック写真であるあることを告白した。 |
大きさは約30フィート
写真類と同時にとられた水中探知機エコーは、その道の専門家であるP・シッツキー(レイセオン社社長)、マーティン・クライン (クライン・アソシエイツ会長、ソナー製作者、デザイナー)、ハロルド・エガートン教授、シムラッド社のR・エイド博士、ハイドローアクースティック社のJ・ブーエーコス博士、そして海洋工学科科長−・ダイヤ一教授ら6人により分析された。写真類を見るより前からすでにレイセオン社は次のように語った。
「・・エコーがもどってくる長さにより判定すると、1時5分、1時17分、1時57分の記録から見て、その動物(たち)はおそらく20〜30フィートの大きさなのであろう。(注3)」
これらの記録がソナースクリーン上に現われていたとき、石英ヨードのサーチライトが水中探知機音波の線にそって水面に照射されていた。
「光がスイッチオンされると、その物体はほんのわずかの間にトランスデューサー(エネルギー変換器)にむかってやってくるように見え、スイッチオフされると遠ざかってゆくように見えた。これは何度もくり返されたが、これらの間にどういう相互関係が存在するのかを見きわめるために、もっと多くの仕事が行なわれるべきである(注4)」
ネス湖において多くの現象が実在するのだというこの最新の証拠は、今日までもっとも決定的であり、またもっともよく証拠づけられたものである。それでも、それはわれわれが今だに知らない事実を教えてはくれない。その物体が動物であるとの結論を受け入れるのは実に魅惑的である。だが、ロングラインの釣りや網はり、スキューバダイビングや潜水艦による調査は、それを支持する有機物的証拠をほんのわずかも提出することができなかった。しかも空中に変な現象が観察されたのである。
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▲ネス湖におけるフランク・サール(左)とグラハム・スネイプ。 |
空中の奇妙な物体
1971年8月のある日の真夜中であった。私は、科学を教えているある若い学校教師でありネス湖調査グループのリーダーであるグラハム・スネイブと、ストローン市の高所にある小路で立ち話をしていた。私がトレーラーハウスにもどって寝ようと思ったときスネイブが叫んで空を指さしたのである。私はすぐに見上げたが、切れた雲以外は何も見えなかった。
彼は、雲の間をぬって西から東へ移動するいくつかの球体を見たというのだ。私たちがもう一度その物体を見ようと空を見まわしていると、農業用ジープを運転しながらパット・クロウェスデール夫人ー地方では名の知れた人−が小道にはいってきた。彼女もまたその物体を見たのである。
われわれは興味をひかれてあたり一帯を訪ねた結果、アクナハネット市にある局のキャンプ地からもそれらは見られたことがわかった。それらは、ゆっくりと低空飛行をし、はっきりとその直径を見せた赤みがかった球(複数)といわれた。アクナハネット市の目撃で印象的なのは、一個あるいはそれ以上の物体が湖の中に飛び込んだということである。
フランク・サール氏−ネス湖の岸辺に3年も住み、彼のとった怪物の写真はデイリー・ミラー紙その他の各新聞に出されたという観察者−は白昼に起こったある出来事について私に話してくれた。彼はある物体が空高く西方からゆっくりと接近しつつあるのが見られたとき、岸の上で訪問者と話をしていた。特にその日は風がそっちの方から吹いていたので、彼らは最初そいつが気球などの一種だろうと考えたのである。
しかしそれは湖の上空を吹き流されてゆくかわりに、しばらくの間空に浮揚し、その後逆戻りしはじめて、もときた方向へ姿を消してしまったのである。
私はその後キャリー夫人に簡単な目撃報告を引き受けてもらうことにして、冬の間に似たような性質のものが出現したら知らせてくれるように依頼した。私に語ったところによれば彼女は1、2度空中に変な色の光を見たが、その性質についてはわからなかったという。
しかし、1971年11月のある夜、彼女はきわめて異様な物を見た。 低空で、ネス湖の中間あたりまでかなりのスピードでやってきたものは、まばゆく輝く黄金色の、明確な赤いオーラをともなったタマゴ型飛行物体であった。そのサイズは、長径でおそらく20フィートはあったという。それは背景の山々の頂上よりも低く、機敏に飛び出し、アウグストス砦に向けて丘のむこう側にはいり、見えなくなった。
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