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▲着陸した火星の円盤。撮影セドリツク・アリンガム |
今度は着陸するらしい。3〜400メートル前方に来たとき、低いエンジンらしい音が聞こえる。これからみると円盤は霊的な物ではないことがわかるとアリンガムは言う。 物体が低く降下するとき、彼は急いでカメラを取り出して撮影した。円盤は彼の方へやってくる。そしてにぶい音をたてて彼の位置から50メートルばかりの所に着陸した。
それは素晴らしい宇宙船であった。直径約15メートル、高さは6メートルほどあり、胴体のすべては一枚の金属板で出来ているらしい。継ぎ目やボルトはなくて、滑らかな金属の表面の色彩と光沢は磨かれたアルミニウムみたいに見える。
上部のドームの下側の丸い壁には、3個ずつ並んだ窓がある。ドームの頂上には避雷針に似た黒い棒が飛び出ている。一方、機体下部に出ている3個の球体着陸装置はゴムに似た少し弾力性の物質で出来ているらしい。何もかもが全く見当のつかない物のように見えた。
異星人の男が現れる!
アリンガムがおそるおそる円盤に接近すると、機体の下部の滑り戸が開いて、一人の男が身軽に優雅に地上へ飛び降りた。相手は近寄って来る。アリンガムが挨拶の意味で片手をあげると、相手も同じように片手を上げる。少しのあいだ2人は互いに相手を見つめ合った。
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▲1954年2月18日の朝、セドリツク・アリンガムがスコットランドの海岸を徒歩で移動中に、ロシーマウスと八ツキーの間で、突如着陸した円盤から出てきた火星人と会見した。この写真は会談が終わって火星人が円盤の方へ歩く後ろ姿をとらえたもの。身長は約180センチ。見かけ上はアリンガムと同年輩に見えた。 |
異星人の外観は大体に地球人と同じであった。アリンガムの身長は174センチあるが、相手はもう少し高い。約1メートル80センチだろう。32歳のアリンガムと、見たところ同年配に見える。頭髪は褐色で短い。
だが相手の皮膚は少し黒いタンニン色に似ている。タンニンというのは五倍子などの植物に含まれる黄色の粉で、インクや染料などの原料に用いられる。だから東南アジア系の浅黒い皮膚に似ていたと思えばよいだろう。しかし相手が地球人の服装をすれば問題なく地球人で通用するだろう。ただ唯一の相違は、相手の額が見たこともないほどに異常に広いことであった。
だが服装はまるで地球人のものとは異なっている。それは体の首から足先までを完全に包んだ一体型で、靴もはいてはいない。服の生地はたぶん絶縁された柔らかい布である。
異様なのは相手の鼻だった。くわしく言えば鼻そのものは地球人と変わらないが、問題は鼻に特殊な器具が取り付けられているのだ。たぶん呼吸に関連のあるものなのか。チューブのような形で各鼻孔に届いており、下部の先端はマッチと同じ大きさの金属製のバンドに接続してある。一種の呼吸装置らしい。
だが、アダムスキーが会った火星人はこんな物を付けていなかったところから察すると、呼吸装置というよりも地球大気の浄化装置ではなかったかと思われる。
男は火星から来た
アリンガムがまず気になったのは、相手の男がどこの惑星から来たかということである。そこで彼は空を指さして質問する仕種をした。すると相手はこころよい微笑を浮かべてうなずいた。目も微笑していた。その顔つきは地球人にはほとんど見られない素晴らしい雰囲気をただよわせていた。
アリンガムはノートブックを取り出して図を描いた。中央に太陽を描き、そのまわりに放射状の光線を取り付けた。そのまわりに3つの円を描く。それは水星、金星、地球の軌道をあらわしたつもりだ。
彼は3番目の円を指さしてから、自分を指さした。相手はうなずく。次に2番目の円を指さして、今度は彼を指さす。 ところが驚いたことに相手は首を振った。彼は金星から来たのではないのだ。
アリンガムは再度図を指さして「ヴィーナス(金星)」と言った。相手もそれをくりかえして言う。それは初めて聞く声だが、流れるような澄み切った音声である。これで相手が地球人でないことは明確になった。
アリンガムはスケッチの中の金星の軌道をふたたび指さしたが、相手はやはり首を振る。 そこで彼は考えを変えて、地球の軌道の外側に4番目の軌道を描いた。それは火星なのだ。そして彼は 「マーズ(火星)」と言った。すると相手は即座にうなずいた。
そこでアリンガムにわかったのは、相手がアダムスキーの会った異星人と似ていないことや、相手の円盤がアダムスキーが見た円盤と似ているものの全く同じではないということであった。
しかしなおもアリンガムはしつこく確かめようと思い、一つの方法を思いついた。火星は赤い惑星として知られているので(肉眼でもかなり赤く見える)彼は外側が赤色の万年筆を取り出して、まず火星の軌道を指さし、次に赤いペンを指して、最後に相手を指さした。すると相手はこの意味を即座に理解して、またも「マーズ」と言った。
地球の戦争を憂慮する火星人
次にアリンガムはアダムスキーの体験記を思い出した。アダムスキーの場合は、デザートセンターで出会った金星人と話し合ったときに、テレパシーやイメージ法を応用しながら意思疎通を図っている。 (注=アダムスキーのデザートセンターにおける体験記は、中央アート出版社刊・新アダムスキー全集第一巻「第二惑星からの地球訪問者」中の第一部に出ている)。
そこでアリンガムはそれをまねて、円盤が火星から飛んで来る光景のイメージを心中に描きながら、言葉を口に出さないで「なぜあなたは地球へ来たのですか」 と心中で質問してみた。
だが相手は答えない。二人は無言のまま見つめ合っているだけだ。どうやらテレパシーはきかないらしい。そこでアリンガムは何かの贈り物を渡すことを思いついて、手にしていた赤い色の万年筆を差し出した。相手はそれを理解したらしく、微笑して片手を上げながら感謝の意を表して服の外ポケットに注意深くしまい込んだ。やはりポケットがついているのだ。人間が着る服というものは、惑星の差にかかわらず、みな同じようなものらしい。
アリンガムは相手の円盤の動力について知りたくなってきた。それでノートブックを取り出して、ロケットの図を描いてみせたけれども、相手はさっぱり理解できないようだ。そこで原子力かもしれないと思った彼は、ノートから紙を裂いて、それを小さく裂いていった。原子の観念を与えようと思ったのだ。しかしまたも失敗だった。相手には全く理解できないらしい。
アダムスキ」のデザートセンターにおける最初の金星人との会見時には、やはり相手もアダムスキーがテレパシーやジェスチャーで語る言葉がよく理解できないような様子を示した。しかし後に再会したときには、同一の相手がアメリカ人と変わらぬほどの流暢な英語を話してアダムスキーを驚かせたのである。つまり最初のときにはアダムスキーのテレパシー能力を試すために、わざと英語を使用しなかったのだ。
この火星人も実際には英語が出来るのにもかかわらず、わざと使用しなかったのかもしれない。彼ら異星人は特殊な機械を使用して地球の言語を短期間に習得するのだと 「第二惑星からの地球訪問者」 に述べてある。
アリンガムが別な質問をしようとしたときに、驚いたことに相手から一つの質問を出してきた。身振り手真似の話しぶりから察すると、地球人類はもう一つの戦争を始めようとしているのかという質問であることは明白だった。
アリンガムは困ったけれど、戦争が起こらないことを希望しているが、よくわからないという意味のことを伝えた。これは相手にも理解できたらしい。 まじめな困ったような表情を示した。
火星には運河が存在する
次にアリンガムは火星の運河について質問するには今が絶好の機会だと思い、またもノートブックに簡単な火星の絵を描いて、地表の明暗の部分や極の氷のキャップを描いた。そして「マーズ」と発音しながらそれを相手に渡した。相手はうなずく。
つぎにアリンガムは植物地域から別な植物地域へかけて長い直線を引き、まず運河を指さしてから次に相手を指さすと、相手はうなずいた。つまり運河は存在するというのだ!
アリンガムはもっと大きな運河を描いた。中央に黒い筋を引いて、その両側に緑地帯をあらわす影の部分を描いた。彼はまず中央の筋を指さし、次に海として描いた大きな黒い部分を指さして、それから運河の両側の影の部分を指さしてから、2人の立っている場所の付近に生えている録色の植物を指さした。
なんと相手はこの意味をすぐに理解して大きくうなずくとともに、2〜3の火星語でしゃべった。つまり火星の運河は実在して、その両側には緑地帯があるというのだ。
それはともかくとして、1800年代にイタリアの天文学者ジョバンニ・スキヤパレリは火星表面に運河があることを発見して大センセーションを巻き起こした。以来天文学界でこれをめぐる論争が展開し、アメリカのローウエルその他は存在説をとなえたが、1969年にアメリカが打ち上げた火星探査ロケットマリナー6号と7号によって、運河と見えたものは大小のクレーターの列だと発表されて運河説は消滅した。しかし実際にはNASA(米航空宇宙局)は運河の実在を発見していながら、それを隠蔽していたという確かな情報もアメリカから出ているのだ。
いったいにNASAは宇宙開発の先駆をなして大気圏外の凄い発見をしながら、片っ端から隠蔽策をとってきたというのが我々GAP関係研究者の把握している情報である。
だが、これはある意味では賢明な策かもしれない。というのは、今の時点で太陽系の地球以外の惑星群に大文明が存在すると公表しようものなら、むしろすさまじいマイナスの結果が起こるだろう。むかしのオーソン・ウェルズによる蛤のオバケのような火星人来襲物語の二の舞よりもむしろ、世界の経済、教育、その他の面で大混乱が発生するのは目に見えている。当分はNASAも隠し通すほうがよいかもしれないというのが筆者の見解である。NASAの英知を信頼したい。
第3話へ続く |