印刷された文章は一見して権威があるように見えるが、これを活字の持つ説得力という。特に横文字に弱い日本人は、海外で出版されたUFO関係の書物を見ると一も二もなく正確な立派な内容だと思い込み、神様から与えらたご宣託のごとく拝み奉ったりする。そしてその内容を鵜呑みにしてUFO 関係の記事を書いたりする。こうした例が過去にどれほどあったことか。編者は昔UFOの専門誌を出す出版社を経営して多くのUFO関係の原稿を集めていたから、裏面をよく知っているつもりだ。
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▲1978年11月15日午後4時ごろ、ブラジルのゴヤス州イパマリで撮影されたUFO。撮影者不詳。 |
現在もUFO関係のまやかし本が出回っている。例えばイギリスで数年前に発行された『UFO百科辞典』と題する分厚な本を見ると、アダムスキーの項目があるにはあるが、その解説文の中に次の一節がある。
「またアダムスキーはパロマー山 ― 世界最大の望遠鏡 ― と多くの関係を持ったが、実際にはその関係は山腹の旅行者用軽食堂で彼がハンバーガーを出していたことであり、その詳細は後に彼の書物(複数)で明確にしている」
この文章は歪曲の極に達したものであり、真実とはおよそかけ離れた記述である。アダムスキーが何度も述べているように、あの軽食堂は弟子のアリス・ウェルズ女史が経営していたものであって、これはアダムスキー一族の生活費を捻出するための仕事であった。この詳細については編者もウェルズ女史から直接に聞いたことがある。
またパロマー天文台の200インチ(5メートル)反射望遠鏡は「世界最大」ではない。この望遠鏡が建造された当時は確かに世界一であったが、その後1976年にソ連(現在はロシア)がゼレンチュクスカヤに口径6メートルの反射望遠鏡を建設して、これが世界最大となっている。前記の百科事典が76年以前に書かれたものならば、パロマーを世界最大と記しても正当であったが、この本は初版が1991年となっているから、パロマー世界一は完全な誤りである。その他、アダムスキーの写真説明には、彼のことを「誘拐されたアダムスキー」と書いている。
こんなずさんな本の著書が当代一流のUFO研究家と称されているのだから恐れいった話だ。天文学関係の知識は皆無といってよい。たぶん反射望遠鏡の仕組みについても知らないだろう。
以上の例でわかるように、世界のUFO研究界は、ひどく混乱していて、特になぜか「誘拐事件」を好む研究家が多いのは特筆にあたいする。誘拐、巨大な目玉のついた逆三角形の顔のオパケ宇宙人、宇宙船内での検査、事後の催眠術による記憶追跡テスト等々。こうしたパターンの背後にはある種の情報工作が潜んでいると思われるが、詳細は述べきれない。
しかしジョ-ジ・アダムスキーの燦然(さんぜん)たる宇宙的な体験や哲学が盲目的なUFO研究家に踏みにじられている現状は長続きしないだろう。というのは、すでに天文学界によって冥王星の内外に次々と惑星が発見されているからである。
『科学朝日』1993年12月号56貢の記事によると、93年度に海王星より遠くを回る小天体4個が次々と発見されて総計6個になったとある。しかも最初に発見された2個の軌道半径は、いずれも43天文単位の距離を有するが、これは太陽系で最も外側にある39天文単位の冥王星よりも軌道半径が大である(1天文単位は地球と太陽間の距離を1としたときの単位)。
かつてアダムスキーは、我らの太陽系の惑星数は9個ではなくて12個だと言明した。これに対して起こったのは嘲笑だけで、むかしGAPの月例会に来た青年は、「9を12と間違えた翻訳者の誤訳ではないか」と息まいていた。笑い話にもならない。
学校で与えられる知識が絶対的に正確であると思い込んでいる人々が、その知識でもって個人の価値観を醸成(じょうせい)するのはやむを得ないことであるし、また学校教育のシステムを軽視するわけにもゆかないが、少なくとも「洗脳されて一種の固定観念に縛られてしまう」ようになりがちであることは否定できない。「UFOなどを信じる奴は教室から出て行け」と先生から怒鳴られる学生生徒は、その時点から教師の知識の次元に引きずり込まれて閉塞された世界で生きることになる。
だが何度も言うように、来世紀には太陽系の惑星群の驚異的な実態が明かるみに出て世界が驚愕し、古い価値観が崩壊して真の意味での宇宙時代が到来するだろう。
その兆候はすでに見えている。前記の小惑星群の発見がその曙光なのだ。現在日本やアメリカがハワイに建設を計画している7〜8メートル級の超巨大光学望遠鏡が建設されて稼働するならば、これだけでも近隣の惑星群に関する驚くべき実状が発見されるだろう。そしてアダムスキーの正しかったことが立証されるようになるだろう。
(久) |