2週間、一つの周波数で、2個の星が調査された。驚くべきことではないが、その結果は否定的であった。ソ連は、もっと野心的な計画を持っており、アメリカによる今後の研究は、研究者たちにより大きな成功のチャンスを与えるだろう。「全部でたぶん数百個の近くの星が、1〜2の周波数で調査されるだろう」とサガン博士は言う。「しかし最も近い星々までの距離を最も楽観的に計算しても、1000億個の星か調査されて、やっとその一つから知的な信号が受信される程度だろう。」
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▲月の表面から上昇中のアポロ11号月着陸船。指令船と合体して1969年7月21日、帰還に旅立った。宇宙飛行士は遂に月面を歩き宇宙の入り口にたった。
cNASA |
我々は初めて、他の恒星の惑星群の文明と連絡できる道具を持った、と博士は言い、その著書『宇宙の関連 ― 地球外の展望』に次のように書いている。「プエルトリコのアレシーボで、コーネル大学は国立天文電離層センターを運営している。そこの直径300メートルの大電波望遠鏡が、銀河系内のどこかの同じような施設と連絡が取れるかもしれないとは、驚くべきことである。」
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▲ニューヨーク州コーネル大学の天文学部長、カール・サガン博士。宇宙生物に関する当代一流の学者である。宇宙生物学は、大気圏外生命の可能性とその探知方法を扱う新しい分野である。 |
専門家は以上のような意見であるが、その時間があるだろうか。電波は光波と同様に、秒速29万9800キロメートルという驚くべき速度で進行する。地球から発射された電波は1年間で9兆6000億キロメートル進行する。地球の科学者チームが、他の知的生物からメッセージを受信しようと、宇宙空間から来る電波信号を聞いていた一方、他の人々は電波信号の発信作業をやっていた。結局、みんなが聞くばかりで、だれも送信しなかったならば、どんな惑星人も、宇宙には自分たちしかいないと考えるだろう。そこで1974年に、巨大なアレシーボ電波望遠鏡から、コード信号が3分間発射された。それは天の川の縁にある星の集団、メシエ13に向けられた。目的地に到達するには、2万1000年を要するのである。この2種類の周波数によるメッセージは、地球の生命に関する科学的情報と、その技術的な業績とを含んでいる。
しかし、この信号がメシエ13の30万個の星々に着くまでには、時代遅れになるだろう。これらの星々の一つを回る1惑星も、生命のしるしを求めて、天空を探索しているだろう。その惑星が地球の信号に応答しても、その回答が地球に受信されるまでには、また2万1000年かかるのである。アレンーボ・センターの所長ドレイク博士は言う。「うまくいったかどうかは、地球のだれにもわからないだろう」と 。
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▲アレシーポ・センター所長フランク・ドレイク博士。彼は宇宙の知的生命とのコミュニケートする試みとして、オズマ計画をスタートした。まる2週間、2個の星が集中的に調査された。 |
したがって、意味を含ませた対話信号は全く不可能である。たとえ発信している人類について、何かを告げている知的信号を我々がキャッチしても、そのメッセージが到着するまでには、相手はその段階を超えて進化しているか、絶滅しているかもしれない。
時間の経過という問題が、天文学のあらゆる分野に存在するのである。最も近い星でさえ、4年前に存在した姿で見えるので星によっては、聖書時代かそれ以前に存在した姿を現在呈しているのである。その星は当時よりも輝きを増したか、鈍くなったか、爆発したか、他の姿に変化したか、これらの何かがあったことは考えられるが、その変化後、当分の間、それを知るすべはない。
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▲アメリカが誇る世界最大かつ最高感度の電波望遠鏡。プエルトリコのアレシーポでコーネル大学が運営する、国立天文電離層センターに付属している。600トンの三角形プラットホームが、直径300メートルのパラボラの上空にかかっている。1974年11月に、地球とその科学技術の成果に関するコード情報を電波で発信した。これは、わが銀河系の端にある星団に向けて発射されたものである。 |
こうした制約は、我々が静止した観測者である限リ、どうにも免れない。アインシュタインの相対性理論によれば宇宙旅行は広大な距離にわたっても、数年間で実現するだろうということだった。時間の拡張として知られる効果のためである。我々が、光速に近づいて進行できたとすれば時計または心臓の鼓動で測定される時間は、地球よりもはるかに遅く流れるだろう。
わが太陽は、銀河系を形成する2000憶の星群の一部である。銀河系さえ、大宇宙の無数の銀河系の中の一つにすぎない。我々はらせん形銀河系の端近くに位置し、その中心部から来る光は地球へ到達するまでに3万年を要するのである。光速だと地球の宇宙船が銀河系の端から端までを横断するのに、10万年以上かかるだろう。しかし乗船者は、一生涯で旅行を達成できるかもしれない。
「適当な宇宙船ならば、銀河系を周航して、地球の測定時間で、ほぼ20万年後に帰れるだろう。当然のことながら、友人や親類は、その間に全く変わっているだろう≠サれどころか社会や、おそらく地球でさえも変わっているだろう」とサガン博士は言っている。実際、特殊相対性理論によれは一生涯中に全宇宙を周航して、想像を絶する遠い未来にこの惑星へ帰って来ることさえ可能である。
光速に近い速度で旅行する手段を発達させる限り、無数の世界を探検することは困難ではないだろう。問題は、意味のあるやり方で報告をもたらすことが全く不可能だということだ。しかし、宇宙もその問題に対する解答を持っているだろう。
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▲ウェストバージニア州グリーンバンクに設置されている、国立電波天文台の直径43メートルの電波望遠鏡。ドレイク博士はメッセージを聴取しようとして、オズマ計画でこれを使用した。 |
簡単に言えば、星々はコントロールされた水爆なのである。そのエネルギー源は核融合である。星は水素とヘリウムから形成されそれが凝集して中心部の原子の激しい衝突を引き起こしたと考えられている。複雉な連鎖反応の後に、星が形成された。ときにはその外皮を脱ぎ捨てたり爆発さえして、新星を生み出したりした。これらの星の近くにある小さな凝縮物は、核融合反応を起こして星になるほどに大きくはなく、代わって惑星になったのである。
天文学上の諸説の中で最もスリルに満ちた推測を呼び起こしているのは、星々の死である。太陽の2.5倍以上の質量を持つ星は、停止させることのできない力でもって、その生涯の終りに崩壊すると考えられている。それは、直径1.6キロメートルまでに凝縮し、さらに縮み、その物質を押しつぶして、ついにその密度は1原子の核のそれを超える。この崩壊が続くにつれて、付近の重力場は、物質が星を離れえないほどに増大する。そして、光がとらえられる。光速で進行する光子(光のエネルギー量子)は、曲線を描いてその星に返って来る。その結果、死滅する星は暗い。それは強力な引力を発揮するが、見ることはできない。このような星は“ブラックホール’と言われる。今のところ、これは まだ理論にすぎないけれども、ブラックホールは、まず間違いなく存在する。はくちょう座の]一1は、連星のしるしのすべてを示す。すなわち、1対の星が互いに相手の周囲を回転しているのだが、ただし目に見えるのは1個だけである。しかし目に見えないほうは太陽の質量の10恰もあり、極端に輝いていると思われる。したがって、それはおそらくブラックホールであろう。
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▲地球からおよそ410万光年かなたの、おうし座にあるプレアデス星団。地球に似て、これらの恒星を回る好意的な惑星があるのだろうか?そこから地球へ訪問者を送り出せるのだろうか?すでに送り出しているとすれば、我々はそれに気付くのだろうか? |
他の多数の天文学者と同様に、サガン博士も、現在進歩した文明を持つ惑星群を従えた100万個の恒星が、わが銀河系内だけでも理論的には存在しうると信じている。そうだとすれば、ブラックホールを応用して宇宙旅行を促進している文明人の中には、地球を訪れているのがあるかもしれない。― ただし、このような未発達な段階にある惑星に、彼らが特別な関心を示す理由は理解しがたい。しかしこのことは、報告されるUFOの速度とその突然の消滅などの理由を明らかにするものかもしれない。我々は、電波によるメッセージでもって時間を浪費しているのだろう。それはちょうど、周囲の空間全体に不可視のメッセージ ― ラジオ、テレビなどの電波 ― が存在するのも気づかないで、1か所から別な場所へ意思を伝えようとして、ドラムをたたき鳴らしているようなものなのかもしれない。適当な受信者がいなければ、メッセージは目にも見えず、耳にも聞こえないままである。たぶん、この訪問者は、全く実体のないものだろう。
空飛ぶ円盤は、かつて宇宙を探検し、文明が絶滅した後に帰って来て、新しく若い文明がその場所に存在するのを見た、地球人の昔の種族によって、操らているのかもしれない。円盤の飛来は、その謎が最後に解けたとき、宇宙よりの来訪者とは関係がないことを立証するかもしれない。しかし円盤問題に対する世界的な関心は、宇宙時代の到来を先触れし、我々が他の文明と接触するための準備をしたのである。
我々は確かに、宇宙において唯一の存在ではない。たとえ今までに報告された空飛ぶ円盤のすべてが、誤認、幻覚、ねつ造などにすぎないことが立証されたとしても、次に出る報告は本物かもしれないのだ。
(終わり) |