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 第8章 人類の住む宇宙 第2話    宇宙よりの来訪者
 

太陽系を突っ走る宇宙旅行で、我々は次に最大の惑星たる木星へ到着した。14万2800キロメートルの直径を持つこの惑星は、太陽系の他の全惑星をすっぽり収容できるほどに巨大である。

これは大部分がガス体であり、その外側の温度は極端に寒冷で、-114℃程度と思われている。惑星を取り巻く雲の帯には、変わった特徴が一つある。有名な大赤斑である。

土星も大部分がガス体と思われる、巨大な惑星である。中心部には硬い核があると考えられる。これも寒冷の世界で少なくとも上層地帯に関する限りそうである。これが、我々の現在の探査機で調査しうる唯一の地帯である。他の惑星と異なる点は環であり、これは厚さ約16キロメートルにすぎないが、直径は27万2000キロメートル以上にもわたっている。

天王星の存在は、望遠鏡の発明後に発見された。それは木星と土星に似ており、温度は約-174℃とさらに低い。海王星はさらに遠くにあり、その存在は、1846年に発見される以前から予測されていた。天王星の予測軌道がはずれたのは他の惑星の影響によるものだと、天文学者たちは推定していたが、これは3年後に正しかったことが立証された。

▲1940年のSF小説のさし絵『タイタンの生命』。
▲1940年のSF小説のさし絵『タイタンの生命』。タイタンは、木星の衛星では大きいほうの−つで、現在はカリストとして知られている。その密度はかなり低いので、氷でできているのかもしれないと科学者は考えている。こんな状態では、怪物すらも生命を維持できないだろう。

太陽系で現在知られている最も遠い惑星、冥王星の存在が予測されたのも 天王星と海王星の軌道が他の天体によってゆがめられているという事実が発見された時である。パーシバル・ローウェルは1914年にその予測をしたが、発見できなかった。彼の死後数年たった1930年に、初めてそれが発見されたのである。しかし、謎は残っている。その惑星は小さすぎて、他の2個の惑星の軌道により生じた結果を説明できない、と思われる点である。まだ未発見の10番惑星が、太陽を回っている可能性はある。

冥王星は凍った小さな天体で太陽を回る軌道を1回転するのに248年を要する。しかし、その軌道はきわめて片寄っているので、ときどき海王星よりも太陽のほうに近寄ったりする。

字宙旅行中に我々は、火屋・木星間の5億5000万キロメートルという膨大な空間に軌道を持っている、大きな岩石群のベルトに遭遇するだろう。これらの岩石は、小感屋すなわちアステロイドと呼ばれる。その発生については謎である。あらゆる惑星が形成されたときに、一緒に作られた物質だと信じている天文学者もいるしアステロイド帯を1惑星の残がいだと見なしている学者もある。

▲1939年のあるSF雑誌に掲載されたさし絵『金星人』。
▲1939年のあるSF雑誌に掲載されたさし絵『金星人』。地球から来た訪問者が何気なくヘルメットを脱いでいる様子は、金星と地球が同種類の大気を持っているかのようだ。ソ連の探査機が近年金星に着陸Lた後、この惑星に関する我々の概念は、急速に変わりつつある。だがまだ決定的な結論は出されていない。

おそらく元は地球に似て、科学技術を持つ文明の発達した惑星だったのかもしれないが、発達の果てに種族の絶滅を招いたのみならず、惑星自体も崩壊して小塊になったのかもしれない。

こうして太陽系を駆けめぐる旅行をしてみても、別な知的生命体を発見できなかったばかりか、異なる温度や気圧のために、かりに生命が発達するにしても、地球とは異なる様式によってだろう、という証拠も示された。したがって、火星、金星、土星その他から空飛ぶ円盤に乗って来るという、人間の姿をした宇宙人の物語は、どうやらフィクションである。しかし、宇宙の他の場所に存在する、進歩した文明の予想はどうだろう?

いろいろな天文学者や宇宙開発科学者が、さまざまな結論を出しながら、この問題に注目している。しかし、生命は存在しえないと言明した人はいない。結局我々は、宇宙についてあまりに知らないので、この問題を確信をもって語ることはできない。だが論理的に見ればもしふつうの恒星を回る1惑星上に生命が発達したとすれば、同じかまたは類似の進歩過程が他の場所でも発生しているという見込みはある。このことは、地球が創造されるよりもはるか以前、多くの場合に発生しているかもしれないので、我々の理解を超えた偉大な能力を持つ多数の文明が存在しているという見込みもある。我々自身の科学技術は、20世紀に驚異的な飛躍をとげている。したがって、次の100年でどのような発達、発見、業績が見られるかを確信をもって予言することは、だれにもできない。

▲1903年12月17日、ノースカロライナ州キティホークで、ライト兄弟が史上最初の飛行をなしとげた。
▲1903年12月17日、ノースカロライナ州キティホークで、ライト兄弟が史上最初の飛行をなしとげた。その日は、どの試みも1分間と続かなかった。しかしライト兄弟が開いた航空時代は、アッという間に発達し、人類が大気圏外へ到達したのは、それから58年後のことだった。

人間が動力を持つ飛行機で最初の飛行を行ったのは、今世紀の初頭にすぎなかった。この偉業をなしとげたのはウィルバー・ライトとオービル・ライトで、二人は1903年12月17日に何度か飛行を行った。最長飛行距離は260メートルて159秒間続いた。

わずか50年後には、飛行機による人間の大量輸送は日常茶飯事化し、1957年10月4日に、人類は最初の人工衛星を製作し、地球を回る軌道に乗せた。スプートニク1号である。宇宙飛行の進歩は、さらに急速に展開している。このソ連の宇宙船が地球の引力を脱出してから12年後に、2人のアメリカ人が月の表面に到着した。ニール・アームストロングは、宇宙の他の天体に降り立った最初の人間になったのである。彼と同僚宇宙飛行士のエドウィン・オルドリンが残してきた足跡は、100万年も残るだろう。地球の歴史におけるこの転換点は、1969年7月21日に発生したのである。

それから3年後に、アメリカは宇宙探査機パイオニア10号を軌道に乗せたが、これは火星の軌道を通過し、約7か月でアステロイド帯を無事突破して、木星に向かった。けれどもこの惑星の引力のために、パイオニア10号はそのコースが変えられ木星通過後も飛行し続け、太陽系外に飛び出す予定である。これは、恒星アルテバランへ接近するまでに、200万年の旅を続けるだろう。そして別の惑星系内へ入るまでには、100億年かかるだろう。

▲1957年10月4日にソ連が打ち上げた世界最初の人工衛星スプートニク1号。
▲1957年10月4日にソ連が打ち上げた世界最初の人工衛星スプートニク1号。重量は69キログラム。その名称は「仲間の旅行者」という意味である。

パイオニア10号内には、地球からのメッセージを彫りこんだ金メッキのアルミニウム板が積みこまれている。これには、手がかりを含めた符号形式で太陽系が示されており、たいていの地球人には謎のように見えるだろうが、これは宇宙船の発進地を、進化した人類へ知らせるように作られたものである。この飾り板には、裸体の男女の線画が刻まれている。なお、それは地球の発達に関する事柄を伝えたもので、数種の新聞社はその絵を検閲する必要があると感じた ― 女の乳首と男の性器を削除せよというのである。未削除のスケッチを公開した新聞社は、宇宙開発当局が宇宙空間にわいせつ物をまき散らしている、といって怒った読者から、投書を受け取ったからである。

▲太陽系を越えて旅するために打ち上げられた最初の宇宙船、パイオニア10号に積み込まれた金メッキの飾り板の図柄。コードによるメッセージはあいまいに見えるが、パイオニア10号を押収できるほど科学的に進歩した人類なら、これが知的なものだとわかるだろう。

地球からメッセージを送ることを考えついた人は、コーネル大学の天文学と宇宙科学の教授カール・サガン博士である。画家である彼の妻リンダが、その黄金色のあいさつ状に男女の絵を描いた。宇宙生物学の最も発言力ある人の1人であるサガン博士は、この方式でメッセージを送ることを次のように述べている。「これは、難破船の船員がびん詰めにしたメッセージを海の中に投げるのとよく似ているが、宇宙という海は地球のいかなる海洋よりも、はるかに広大である。」

どこかの惑星人が無言のパイオニアと、その符号メッセージを発見する可能性は大いにあり、宇宙メッセージが惑星や恒星の引力圏内に入って燃える前にそれを押収することのできる文明にかかっている。びんに入れたメッセージは、やがて岸辺に着いて、遭難した船員を救助するが、それはまれである。パイオニア10号は宇宙空間の中に消え去って、地球とその住民のすべてが絶滅してしまった後も長くとらえられないだろう。しかし他の世界と連絡を試みて、相手も我々とコミュニケートしようとしているかどうかを調べるのには、はるかに優れた方法がある。

1931年に、わが銀河系の中心部から電波が来るのが発見された。ただし電波天文学がきわめて重要なものとして出現したのは、それから約20年後である。電波以前に用いられていた光学望遠鏡には、明白な欠点がある。それは、天候が長期観測に適した場所で使用されるにすぎない。大気を貫いて、宇宙空間という豊満な世界を凝視しても、これだと当然のことながら明りょうな観測が妨げられるのである。電波望遠鏡は、宇宙から来る信号を集め、それを増幅し、探知しうる信号に変えている。それは、光学観測に障害となるような気象条件下でも作動する。電波は光と同様に、一種の電磁放射線にすぎない。

「進歩した惑星の文明が、こちらへ電波信号を送っていて、我々がそうした信号を受信するほどの科学技術を有しているという見込みはあると思う」とサガン博士は言っている。

第3話へ続く

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