我々はエレベーターに乗って急に下降するときに腹の中がボワーッとしたような感じになることがある。このとき乗っている人間は"自由落下"の状態にあるが、エレベーターは下降速度が制御されているので、その感じは長続きしない。しかしエレベーター・ホール(たて坑)の深さが数百キロあり、下降速度が制御されていないとすれば、乗っている人間は定数9.8メートルの加速度で1秒ごとに速く落下してゆくことになる。
我々がいつも腹の中がボワーッとしたような感じになるかどうかは問題である。パラシュートをすぐに開かないで長時間の落下をやったことのある人はそんな感じがしないといっている。十中八九は全然不快感が起こらないだろう。さて、この長いエレベーター・ホールを落下するあいだ、人間はたえず"自由落下″の状態にある。すなわち"重力場"に従っているのである。そしてエレベーターも人間も無重力の状態となる。更に重要なのは、この両者のあいだに相対的な運動はないということである。
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▲第3図 |
もう少し考えてみよう。いま小さな鉄の皿を持ち出して高所から吊り下げることにする。皿の上に一個の小さな鉛の球を置くが、この質量は皿の質量と等しい。これも同じ高さの位置から吊り下げる。これは第3図(a)のように皿とは別にまったく自由な状態にある。次に皿の一方の端に電磁石を置くと、これは皿を引き寄せるが、鉛の球は引き寄せない。そこでこの場合は(b)のように皿と球のあいだに相対的な運動があったことになる。
ところが、鉛の球のかわりにタマゴを置いて、相対的な加速度を大きくしてやると、タマゴは割れるだろう。皿とタマゴが等速運動をして、皿だけが急に停止したとすれば、これと同じ働きをしたことになり、タマゴはこわれるのである。
今度は鉛のかわりに鉄の球を置いて実験をくり返すことにすると、皿と球は等しい加速度で電磁石に引き寄せられる。(c)に見られるように両者のあいだには相対的な運動はない。
これは落下するエレベーターの場合と似ている。両方ともフォース・フィールドが物体に作用している。おもな相違は、磁石はある種の金属の物体しか引き寄せないが、地球の重力場はエレベーターもその中にいる人間も何もかも引き寄せているということにある。そうだ、人体をも引き寄せているが、もっと重要なのは我々はそのことにまったく気づかないという事実である。
多数の人が容易に認めないのは次の点だ。我々が地球の表面から数千キロ離れた位置た置かれるとすると(できれば宇宙服を着て)、加速されながら地球へ落下するだろう。地球の質量が倍になったとすると、加速度も増大するだろう。
これは、もし何かの方法で地球の質量がコントロールされて増大したり減少したりするとすれば、人間が落下する加速度も増大したり減少したりすることを意味する。これが重要な点である。我々はこの簿にまったく気づいていない。なぜなら、地球の重力場は人体のあらゆる部分や宇宙服に等しく作用しており、同じ瞬間に分子や原子などのすべてにも作用しているからである。
ここでしばらくのあいだ、空飛ぶ円盤はそれ自体の重力場を発生することができ、しかもそれを自由にコントロールできると仮定しよう。
つまり意のままに前後に発生させるとする。すると円盤は重力場が存在する限り、その方向に加速することができるだろう。その加速度は重力場の強さ次第で変わるのである。この考え方はあまり正確ではないが、最も重要である。というのは、ここに専門家たちを悩ませた、というよりも懐疑的にさせた目撃例、すなわち円盤がある一瞬に見られて次の瞬間には視界から消えたという例に対するカギがあるかもしれないからだ。
ファンタスティックで信じられないと人は言うだろう。もちろんそのとおりだ。かつて存在したか今後存在するかもしれない物はすべて、我々がそれをよく知らない限り常に信じられないのである。しかしこの説はまったく不可能なことだろうか。不可能ではない。重力場が考えられて、それに対するパワーが与えられるとき、宇宙船は一瞬静止して、次の瞬間には光速に近いスピードで進行できるだろう。そして乗組員は自分たちが動いていることを知覚しないだろう。これが円盤によって示されるものすごい加速度に対する唯一の解釈である。
つまりこの方法こそ内部の乗員、装置、船体の構造自体が極端な加速に耐え得る唯一の方法なのだ。これが円盤の不可思議な要素すべてを解明することになるのである。
重力場推進方式にひそんでいる種々の性能を考えてみれば、これはきわめてすばらしい事になってくる。この推論をしているのは私だけではない。たとえばイギリス宇宙旅行協会々長のアーサー・クラークはそのすぐれた著書"宇宙の探険"でそのことを論じている。
SF作家たちのいう宇宙空間推進法に言及し、人体にかかるものすごい加速度の影響は、あらゆる原子に作用する力(複数)を応用することによって解消できると言っている。100Gの加速度は人体を無重力状態にするだろう。このような推力は不合理に思えるかもしれないが、クラーク氏によれば重力場というものはたしかにこのような状態を生み出すというし、そして木星と矮星シリウスBの重力場の加速度をあげて要点を説明している。
木星の場合、その加速度は地球の重力加速度の2.5五倍に等しく、シリウスBの場合は表面重力が少なくとも地球の2万倍となり、その加速度は銃から発射された弾丸よりも速いことになる。いずれの場合も人体は全然ひずまない。
我々が重力と宇宙の構造に関する知識を得るならば、このような推力を実現させることができるのではないかとクラーク氏は推測し、瞬間的な加速時間でもって光速に近いスピードが出せれば、コントロールされた重力場推進方式の効果が大であると述べている。
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▲第4図 |
次のようにつけ加えておいてもよいだろう。宇宙船の推進に関するクラーク氏のこのような推論にもかかわらず、氏は円盤がよく示す重力場現象らしきものには関心がないらしい。
だがよく円盤が接近しながら編隊を組んで飛んだり、高速で急に直角のターンをやったりするときに見られる奇妙な現象を説明するのに他の方法はない。たしかにここには従来の科学技術の知識外で作動している"何か"がある。第4図の物体Aが一定の方向Sにむかって速度Vをもつものとし、インパルスTが、Sの方向に対して直角に速度Yに加えられるとする。すると物体はYの方向に動いてゆく。しかしこの図においては物体は直角にターンしているのが見られ、これは方向Sでは初速をすべて失っていることを示している。
言いかえれば物体はその特定の方向に対して限りなく減速したのである。これは重力場以外の方法では説明できないことだ。もし円盤が航空力学的なものとすれば、この空中曲芸は構造の驚異を物語っていることになる。
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▲第5図 |
第5図に見られる飛行機が高速急降下からブールアウト(注=急降下から水平姿勢になること)に移るあいだ、遠心力によってパイロットにかかる圧力を考えてみよう。三通りの状態になることがわかるだろう。すなわちプールアウトAの直前に存在する状態、カーブB、垂直と水平になったときの状態Cである。ここで仰率半径は大きく減少している。
ニュートンの運動の第一法則(注=慣性の法則。静止もしくは一様な直線運動をする物体は、これに力が作用しない限り、その状態を持続する)によれば、機体・パイロット・人体内の血液などはまず進行線A上にある。Bにおいては航空力学的な力が機体に作用し(遠心力)、この力はFの方向に加速する。このとき機体は慣性が働いているパイロットの体に加速度を伝える。同時にパイロットの体は機体の運動に従うが、一方、体内の血液は元の運動の方向にとどまろうとして、加速Fに抵抗する。このとき脳の血液が不足してブラック・アウトが起こったりする。
加速Fは本来外面的なもので、内面的な機体の構造・パイロット・血液などは、この外面的な力によって加速度をつけられたのである。
ところで重力場という見地から再度検討してみると、この状況はまったく異なるのである。この場合、外面的な航空力学的力は全然存在しない。実際は機体もパイロットも"内面的な"加速度を受けるので、機体やパイロットやその血液などのあいだに相対的な運動はない。いわばこれらは一体化するのであって、物質のあらゆる分子・原子は内面的な、すなわち個々の加速度を受けるのである。
これはきわめて重要である。というのは、この方法によれば宇宙服は必要ないということがはっきりしてくるからだ。しかもこの方法で推進される宇宙船のパイロットは、もし操縦室が密閉されて空中を高速で飛行するならば、飛行をまったく感じないだろう。本人は家の中でイスにすわっているのと変わらないはずである。
だが次のような疑問も起こるだろう。「円盤が重力場で作動するのが正しいとしても、その乗員は地球のロケットの乗員が"自由落下"で体験するのと同じ無重力状態になるのではないか?」
これは船室や乗員に対してごくわずかに異なるフィールド(場)を生じさせるような装置がない限り、そういうことになるだろう。
ここで100Gに等しい加速度を生じるフィールドの中にある円盤型宇宙船について考えてみよう。もし船体と乗員がこの力を受けるならば、そこには相対的な運動はなく、全体が"自由落下"に等しい状態になるだろう。そして乗員は無重力状態になるだろうが、船室と乗員が99Gの加速度を生じるフィールドの影響を受けるならば、船室と、船体の他の部分とのあいだには1Gの相違が起こり、乗員は正常な重量のある状態になるだろう。
重力場理論の論議となれば、高速飛行が微妙な装置類に与える影響を考慮すると、もう一段複雑となってくる。そしてこのような状態のもとで発生する事柄を調べるためには、装置類も強力なGのかかる遠心力機に"乗せて"みる必要がある。機械装置というものは高加速度がかかると奇妙な事をやり始める。通常約13.6キロで作動するサーボ機構におけるリターン・スプリングは不活発になるか、またはある瞬間には全然作動しなくなることがある。これは急に別な力が加わるからだ。これを克服するには種々の支障があることが考えられるが、ここで遠心力が問題を解決するのにきわめて重要な役割を果たすのである。
だがそれにしてもいずれは限度に達するだろう。我々はそこまでは到達はできるだろうが、それから先へは行けないだろう。つまり、各パーツを二重にしてサーボで補助する必要があるが、そうすれば内燃機関ほどの重量になる。もっと軽量にする方法を考えなくてはならない。
ところが重力場推進方式を用いる宇宙船ならば、こんな問題はない。非航空力学的な飛行体では操縦部分が不必要となり、そのため重い複雑な機構は排除できる。現在この地球にやって来る別な惑星の宇宙船はおそらくいかなる種類のてこやギヤーなども用いてはいないだろう。複雑な飛行やコースの変化などはすべて簡単な押しボタン方式で可能なはずである。
重力場推進のあらゆる条件はすでに存在している。別段新しい事ではない。我々は子供のときからそれに闊係しながら成長しているのだ。だれもが日常生活でそれを応用している。それは最もよく知られたことなのだが、理解しがたい大自然の秘密−引力である!我々はそれがマジックでないことを知っている。それは現実のもので、種々の法則を伴っているのだ。我々が最後的にこれらの法則を理解するとき、何らかの方法でその引力を応用することが可能になるだろう。
科学のあらゆる分野において、我々はしばしば効果的な方法を発見している。むかし人々は飛行機というものは大西洋を横断することはできないと言った。これは完全に数学上の計算に基づいた考え方である。もちろんこの誤りは当時存在していた既成の各種の効率を応用した結果である。だがもっと近年になると、たとい別なエネルギー源が存在しているとしても、それを動力として利用するには巨大なエネルギーの開発を待つ必要があると言われている。ここでもこの考え方はまったく現代の知識に基づいている。だがこれは間違っているかもしれない。だから前進するにつれてオープン・マインド(寛容の心)を持つ必要がある。
宇宙船の推進法として重力場方式はほど遠いことかもしれないが、この原理が輸送・科学技術・産業などにおよぼす影響は革命的なものとなるだろう。ある種の病気をもつ人々のために完全な、または部分的な無重量状態を地上の病院内で起こすこともできるようになるだろう。
今まで不可能とみなされていた科学技術上の離れ業が実際的なものとなり、不完全な交通機関のために起こる道路上の死亡事件は過去の悪夢となるだろう。宇宙飛行士は重力場で操作される望遠鏡を使用するようになるだろう。その内部で現代の望遠鏡と同じように光線が屈折して今は夢想もできないような視野と高倍率が得られるようになるかもしれない。この夢は今我々の惑星にやって来る"人々"によって遠い昔に達成された事かもしれない。
次の報告は未来の科学の一つの可能性を示すのに役立つと思われる。エネルギーが純粋な光のかたちで散るならば空中の正面衝突も致命的とはなるまい。
時は1950年7月29日、場所は米イリノイ州スプリングフィールドである。午後11時頃、キャピタル航空会社のチーフ・パイロットが飛行機で飛んでいたとき、突如青い光線に似た一個の物体が矢のように彼の方へ向かって来た。尾部とおぼしき部分から赤い炎が出ている。地上から少なくとも四名の人がこれを見た。よけるひまはなく、この物体は飛行機のプロペラに突っ込んで来た。動揺も音もない。だがパイロットが見たこともないようなものすごい閃光を放ち、それから消えていった。あとで機体を調べると全然損傷はなかった。焼けたり燃えたりした跡もないのだ。
用心深い人ならこれを聞いて首を振るし、公然と疑う人なら嘲笑する。これは当然だ。こんな事件は最も空想力に富んだ人でも肯定しがたいことである。科学のあらゆる分野において、もっとはるかにまともな事を信じても人は笑われたのだ。だがこの意味はこうである。つまり重力場を応用した飛行体の原子までも完全にコントロールできれば、正面衝突の事故さえも避けることができるのだ。もちろんこれを認めるのはむつかしい。二個の物体が衝突して、しかも無キズでいるというのはー。そうだ、そんなことがあるはずはない。だが原子自体の99パーセントは空間であり、いまこの記事が載っている紙も見かけは固体であるのにカラッポの空間だらけであることを考えれば、果たして不可能なことだろうか?
ここでモデルを用いて原子の"カラッポ"を説明しよう。いま原子モデルとして一本の糸の端に小さな鉛の玉をとりつけ、これを電子とする。これを"軌道に乗せて"ぐるぐると振り回せば、持っている手が原子核となる。さて別な鉛の玉を用意して最初の玉に対して直角になるように振り回すことができるが、このときはそれと重なるのである。そしてこの場合は糸の張力を重力に似た力とみなす必要がある。そこで次のようになる。もし空間にこのような二個のモデルがあるとして、それが相手の方向へ急速に進行するとする。もしこの小さな玉が二個またはそれ以上あって接触すれば衝突するだろう。しかしその軌跡で描かれる面をコントロールできるならば、各玉を接触させないですむ。
いわば各モデルは互いに"通り抜ける"のである。たしかに、もし回転するこのような玉が二個あるとして、各玉が互いにタイミングよく軌道を回るならば衝突を避けることができるし、その場合は二個の"球体"が存在しているように見えるだろう。一個の"球体"の回転速度が他の球体の回転速度と正確に合致していれば、見かけ上二個の"球体"は衝突したというよりもむしろ互いに通過したように見えるはずである。
だがこのたとえは原子の相対的なカラッポの説明として少々粗雑である。実際には電子群が互いに接近すると電気的斥力が発生すると考えられるのである。しかし、当分の間オープンマインドをもってこの理論を受け入れることにし、はめ絵パズルがうまくゆくかどうかを見ることにしよう。先の解説で私は円盤は表面上無音であること、地球の大気圏中をマッハ5まで加速される船体の表面は、摩擦のために温度がかなり上昇すると述べた。だが高速で飛ぶ飛行体につきもののソニック・ブームがない。
ここで船体自体の重力場によって地球に向かって宇宙空間を進行する宇宙船を考えてみよう(地球の引力による影響はないものと仮定する)。この宇宙船が大気圏の希薄な上層部をかすめ始めるにつれて、船体に最も近い粒子群が重力場の影響を受け、船体そのものといっしょに進行するだろう。言いかえれば、船体は重力場の影響によって絶えずいっしょに進行している空気と決して接触することはない。そのため摩擦もなければスピードが落ちることもなく、ほとんど音も出ない。非常な高速になると、この空気帯が船体にかわって重力場の影響域外にある空気の粒子に摩擦による動きを与えるので、空気の乱れと音響を発生させるだろうが、この粒子群の速度が外側へゆくにつれて落ちることを考えれば、この音響はかなりやわらげられるので、たぶん地表からは聞こえないだろう。もっとも低空で飛ぶ円盤が一種の音を発生することは十分考えられるが、これは少数の例にすぎない。
重力場理論のこの一面の意味が理解できない人はほとんどあるまい。これは我々が航空力学について知っている事柄をある程度放棄することになるだろう。速度の低下や衝撃波などはもう存在しないのだ。高速で飛ぶ飛行体の外部のオーバーヒートや、その他航空力学者の頭痛のタネとなっている事をすべて解消するのである。だが学者はこの発見を喜ぶだろうか?当然のことながら喜ばないだろう。自分の仕事を物理学者にゆずり渡さねばならないからだ。
天文学者は大気圏外で天体とイン石が衝突する機会を計算している。見たところこの機会はきわめて少ないが、重力場はこの可能性をゼロにする。これはたしかに天文学者の見地からすれば望ましい特徴である。
これまで筆者に対して質問が出されたことがある。「イン石やガスの粒子のような固体のすべてが円盤タイプの飛行体の進路から遠ざけられるとすれば、その結果起こるフォース・フィールドがレーダーのエコーを妨害しないか?」 これはちょっと考えてみればわかることである。もし妨害するとなれば、あらゆるレーダーは地球自体の重力場によってだめになるはずだ。
重力場の作用範囲は破壌的ではないにしても強力であり、これは次の二例によって証明されている。その一つは不幸にも悲劇であった。 (注=ここにはアイダホ州のUFO出現事件やマンテル大尉の悲劇その他の実例が述べてあるが省略する)
これらの各実例においてはある種の強力な放射線が存在するように思われるが、これは重力場そのものを発生させるパワー・ユニットから出るのだと速断してはならない。実際には、重力場の中のあるフィールド(場)の発生がこのような効果を生じさせるのかもしれない。
そうだとしても原子エネルギーの高度に発達した方式が円盤に用いられているとも考えられる。だが驚いたことに、それにはごくわずかなエネルギーしか必要としないのだが、それは後述しよう。
さてこれまでに種々の興味深い観察をしてきた。そして重力場方式による現象が在存する動かしがたい証拠があるのだけれども、その形跡は確実に存在するのである。
(1)固体は船体をとりまく"力"によって動かされるか、または反発される。
(2)極端な高エネルギーのショート(短絡)があるらしい。その結果、円盤が地面と接触するときにエネルギーは完全に発散してしまう。
(3)船体全体はしばしば高度に磨かれた鏡のようにきらめくか、一種の小型太陽としてみずから発光するのか、または外壁が青灰色の単なる金属的な物なのか、このいずれかのように見える。このどれにしてもまず間違いなく考えられるのは、材質の中か、その周囲の空間にか、あるいは両方にか、とにかく何らかの変化が起こるということである。
以上の三つの要素は各種の円盤目撃報告から引き出されたものである。
読者は質問するだろう。「このようなフィールド(場)を発生させる既知の方法があるのか。この目的で研究が行なわれているか?」と。あるのだ。多くの研究が行なわれているし、まだ効果はあがらないけれども各種の方法が研究されている。だがもっと重力の性質を知らないと成功しないだろう。
だれも知っているように、噴射推進方式は基本的にはガスの噴射で起こる反動を応用したものである。その噴射量が大きくなればなるほど、反動も大きくなる。
そこで明らかになるのは、究極の型と効率は可能な最高速で噴出するガスにかかっている。核反応ロケットはこれに到達する手段であるかもしれないし、一定の積載物と共に限りなく速度を速めて宇宙空間を進行できるかもしれない。しかしこの可能性はロケット製作者の夢を大きく高めるけれども、自然が人間に課している種々の慣性の力によって人間は縛られている。たとえば我々は核反応によるエンジンを完成したとしよう。これはごくわずかな量の燃料で宇宙船にいつまでも推力を与えるとする。ロケット開発者の夢は実現した。もう我々は無重力状態について心配する必要はない。常に1Gまでの心地よい加速度で地球を離れるからだ。言いかえれば毎秒約9.8メートルの定数で加速されるのである。これは目的場所までの半分の位置へ着くまで保てるだろう。
それからエンジンを逆向きにして同じ1Gで減速し始める。この宇宙族行中はずっと地上にいるのと同じ快適さを感じる。ただし方向を逆向きにするときの短時間だけは別である。この点までの状態は軌道を回る宇宙ステーションと同じである。おもな相違は、宇宙ステーション内では1Gという人工重力が遠心力によって生み出され、そのため地球と宇宙空間が船体のまわりを回っているように見えるだろう。
もしこの目的地が火星であるとして、地球に最接近したときの距離を5600万キロとすると、中間点で達する最高速度は時速約267万キロとなり、全部で42時間ほどかかる。完全に開発された状態のロケット・モーターを用いるのでこれは今まででは最上の方法である。明らかにこれは太陽系内を旅行するには実に長いが、星間飛行となると長期間にわたってものすごい加速度をつけねばならない。しかも数年かかるのである。
ところが重力場で作動する宇宙船が、瞬間的に時速約267万キロに加速して"コンスタントな"速度で飛ぶならば、同じ距離にある火星へ21時間で行けるのだ。このような速度は現段階では不可能のように思われるが、時速267万キロの速度さえも、重力場で進行する宇宙船にとってはきわめて控え目な推定であろう。
重力場推進理論が正しいとしても、次のような質問が出るかもしれない。
「そんな速度で宇宙空間を推進させるのに必要な巨大なパワーをどうやって発生させるのか? どれだけの燃料が必要なのか? こうした問題は克服できないのではないか?」
我々が現段階の知識でもって論ずる限りそれは克服できないだろう。だが精神的な束縛を除くことができれば、まったく新しいタイプのエネルギーが我々の周囲に存在することを悟るようになるだろう。開発されて動力に利用されるのを待っている、今は我々の夢の彼方にひそんでいる、新しいエネルギーだ。
これは作り事ではなく、事実なのだ。ひとたび我々がそれを認めて解決しようと努力するならば、それは我々のものになる。そんなエネルギーが存在するのなら、その証拠はどこにあるのか、という反論も出るだろう。それを示す簡単な方法があるだろうか? ある。
やや大ざっぱなたとえだが、それを証明することはできる。我々は文字通りにそれを認めようとはしない。我々を迷わせるかもしれないからだ。だがそれは重力の背後にひそむパワーの貯蔵庫のドアーをはずすカギを示してくれて、星々への放で役立つかもしれない。いつ実現するかは、可能性を認めて研究を始めようとする我々の意志にかかっている。そこで簡単な説明として、またモデルを用いることにしよう。このモデルは自由な空間に作られて、いかなる引力場からも影響を受けないと仮定する。
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▲第6図 |
大抵の人は鏡に反射する太陽エネルギーのことをよく知っている。ここではパワーを持って軌道を回る宇宙ステーションに供給されるが、これは第6図のような循環系統を持つ装置によるものとする。この図では二個の大きな電磁石を除いては格別新奇な物はない。
太陽から来る濃密なエネルギーはパラボラ反射鏡Aに接触し、焦点Bに反射するが、この位置にはボイラーが置いてある。ここで蒸気が発生して、タービンCに送られて仕事をし、熱変換器Dに返る。これは反射鏡の"冷たい"裏側にとりつけてある。するとふたたびボイラーへ返って、この循環を際限なく続ける。タービンに吸収されたパワーは発電機Eを回すのに用いられ、それによって起こる電流は電磁石FとGに供給される。その結果発生する磁場の両極のためにコイルに吸引力が起こる。この電界の強度は反射鏡の大きさによって制御される。反射鏡の面積が大であればあるほど大きなエネルギーが捕捉され、磁場も強くなってくる。
ただ難点となるのは、この条件は常に存在するということである(機械装置の疲労は無視するものとして)。重力にたとえれば、コイルFは地球であり、コイルGは宇宙船、コイル上の小さな乗員Hはこの条件に対して何もしない。
しかしこの乗員に知性を与えて、きわめて少量のエネルギーを消費するスイッチTの意味を気づかせれば、彼は電磁石Gの両極を変換させることができ、宇宙空間へ飛んで行くだろう。
具合のわるいことに、そのフィールドの性質のため、彼は激烈な加速を経験し、それを語らないうちに死んでしまうだろう。だが、元の目的を忘れてはいけない。ほとんど無視してよいほどの消費によって無限のパワー源を得ようという目的である。これに関する最重要事は簡単な比較にある。もちろん"円盤乗員"は太陽反射鏡を使用していない。おそらくその段階を通り過ぎているだろう。彼らは太陽エネルギー放射線とよく似た物を捕えてそれを凝縮し、応用して、我々にはわからないような方法で重力場を発生させているのかもしれない。
我々のテーマは永久運動のヒント以上のものを含んでいる。だからその意味がいかに深遠なものであっても、結論について懸念する必要はない。永久運動について宇宙自体の機構以上にもっと強力な実例があるとすればそれは何だろう。その点を徹底的に究明しようと努力する場合、レール上を走っている機関車にたとえてよいだろう。レールの片側には水を流す無限の水路があって、集水器により水が機関車に供給される。一方のレールには別な水路があって、ここから機関車へ燃料オイルが供給される。これではっきりとわかるのは、機械の疲労を別とすれば、ここには永久運動があるということだ。
一口に言えば、この場合は大地のエネルギーを取り出し、それを応用しては元へ返しているのである。ただしこれはまことに効果のない方法であることを我々は知っている。宇宙空間といえども同様である。しかしエネルギーは存在するのだ。ただそれを動力に応用するのに最も効果的な方法を発見しさえすればよいのである。
G 重力のメカニカルな譬(たと)え |