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| ├ 写 真 |
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| 巻頭言 −愛ー | |
| NewsLetter No.64 1976より転載 |
| 黙って愛を実行する人が結局強いのではないだろうか。 |
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明治の末か大正のはじめ頃、東京に住む一人の若い看護婦さんが貧民の救済活動を思いたった。クリスチャンである彼女は貯蓄をし、衣類や日用品などを購入して、これを乳母車に積み、ある下町のスラム街を訪れた。恵まれない人々にプレゼントしようというわけである。 ところが、彼女の姿を見た貧民たちは一斉に飛びかかり、醜悪な争奪戦を演じたあげく、彼女の衣服まではぎ取って暴行を加えた。 かくて、うら若き女性の崇高な愛の精神と清純な肉体は虫ケラどもの蹂躙するところとなり、無残な結果に終わった。これは実際にあった出来事である。
ここで重要な問題が起こってくる。いかに高次な愛や慈悲の精神に燃えていても、知恵がともなわなければ、それが生きないということだ。現代の世相を見ても、精神的にはあの貧民たちを一歩も出ない人間が充満し、権謀術数が渦巻き、到る所に陥穽やワナが仕掛けられていて油断をすればいつ蹴落とされるかわからないような状態の中を、人は戦々恐々として生きている。うかつに他人を信用してかかると、逆に人の好さが利用されてひどい目にあうこともあるのだ。 ところで、この頃、新聞によく日本の防衛問題に関する論争が出る。大別すると、一つは、軍備を持たぬ無防備の国に攻めてくる外敵はないはずだから防衛力を持つ必要はないというもので、もう一つは、ナチスドイツの侵略の例をあげて、歴史を直視すれば防衛力は必要だという。その中には中国古代の兵法書を持ち出し、手をこまねいて外敵の侵攻を甘受しながら同胞の婦女子が陵辱されるのを傍観するのが本当の愛ではないという一節を引用したものもあった。 アダムスキーの体験記によると、進化した惑星の人々は、宇宙空間で外敵に遭遇した場合、相手を殺すよりも自分たちの死を選ぶというので、これにいたく感動した人は、完全な無拭抗主義を我々も実践すべきだと思いがちである。 しかし、ここには見落としがあるようだ。 我々の想像を絶した進化をとげているスペース・ブラザーズは死という現象に恐怖心を持たぬし、生命の連続を知っている彼らは、死後ただちに良き場所に生まれ変わることも心得ている。 このような人々と地球人とを同等のレベルにおくわけにはゆかない。彼らが自決する際は、おそらく瞬時にして肉体が元素に還元するような方法により、苦痛のない死の手段を講ずるのであろう。 こうした人々の生き方は我々にとって理想ではあっても地球上の現実にはあてはまらない。弱肉強食の世界に生きる人間が無防備・無抵抗主義に徹したところで、所詮、悲惨な結果を招き、相手をのさばらせて、この世界をより以上に地獄化するだけだ。だからこそスペース・ブラザーズも地球上に潜入してひそかに活動を行なう場合、正体を隠しているのである。これも彼らの防衛手段なのだ。 要はア氏の体験記や哲学を究極の理想としながらも、まず両足を大地にしっかりとつけ、カッと眼を開いて周囲の現実を直視し、警戒すべきものは警戒し、防衛すべきものは防衛して、自己の土台を確立した上で、宇宙哲学の実践に精出すべきだろう。 漠然とした観念論や感傷的な平和主義は中途半端な結果に終わるだけである。 本号別掲記事でア氏は 勇気と愛 の徳を説いている。もちろん、この二者の背後には相応な知恵が存在する必要がある。 信じょうとしない人にむかってア氏の体験や哲学を説いても、逆に嫌がられ軽蔑されるかもしれない。伝えるべき相手を感知するための直感力と聡明さを必要とする。これが知恵である。 ”真の愛” の定義はむつかしいが、しいて言えば、それは自他共に救われる手段を講ずることを意味するものであろう。優越感や安っぽい犠牲感の上に立って一方的に他に対する救済を行なえばトラブルが発生するだけだろう。 というわけで、我々はロマンチック理想論から脱却する必要がある。もちんア氏もそういうことを鼓吹したわけはなく、それどころか宇宙空間の驚異的事実を伝えて、生命の発達に関して無の可能性を知らしめ、その方法を伝授した。そして観念やイデオロギーの遊戯でなしに、実際的なすばらしい自己開発法を残した。これによれば真の愛の理解が可能になるはずである。 究極において人間に最も必要なものは愛であろう。そして其の愛に目覚めた宇宙的な理想社会はいつか到来するだろうが、その前に人為的な大変動が発生して地球上の様相は激変するかもしれない。それにより邪悪なもののすべてが一掃されて、スペース・ブラザーズの指導下少数者のみによる黄金時代が来世紀に花するとも考えられるが、そこまで生き伸びられないにしても、良き惑星に生れ変わるだけの準備をしておく必要はありそうだ。 それには、くだらぬデマや中傷など全く無視して黙々と宇宙哲学を実践すに限る。黙って愛を実行する人が結局強いのではないだろうか。 (久) |
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