私が個人的にインタビューして徹底的に質問した、ただ1人だけ知られている目撃者は、年令21、2才くらいの若いブラジル女性で、背の高い体格のよい田舎娘、サンパウロ州の或る町の出身者である。私は本人の氏名と住所に関する詳細をFRS誌に知らせたが、だれにもわかる理由により目下はこれを伏せておく必要がある。
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▲第1図 |
その若い女性はたまたま新聞で最近サンパウロで開かれた”空飛ぶ円盤討論会”に関する記事を読んだという。そこで彼女は重大問題だと思っている自分の物語をブラジル・ヘラルド紙の本社へ行って話す気になった。彼女が同社の専務取締役ウィリ・ウィルツ氏に話していたところへ偶然に私が事務所へ現われて尋問に加わることができたという次第である。
われわれは目撃者の態度が率直で素朴であることがわかった。彼女はすてきな印象を与えたのだ。彼女が明らかにしたのは、広く世間に知られたくないこと、知らせることが義務であり、この事件が重大にちがいないと感じたために申し出たにすぎないことなどである。彼女は何を目撃したかをよく心得ているようで、また目撃した物はたぶんもっとありふれた別な物かもしれないと私がほのめかしても、全然動揺する気配はインタビュー中に見られなかった。
彼女の物語
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▲第2図 |
話は次のとおりだ。1968年11月21日の夕方、彼女はグァルロスとヴィラバルロス(いずれもサンパウロにある)両町間の環状グァルロス路線のドゥートラ道を走る田舎バスに乗っていた。
午後9時30分にバスはマセド付近の田舎停留所で停車した。ここで少憩するのが運転手の習慣である。この日のように予定時刻より早目に着いたと思われる場合は特にそうするのだ。
その地点に街灯はないが、夏季なのでまだかなり明るかった。道路の左手に一帯の荒地があり、彼女がバスから約40メートルとみた距離の所に、立っているのか地面に近い空間に停止しているのか、アエロウィリス社の大きさの輝く金属の物体があった。(つまり英国製ジャガー4ドアーサルーン車の大きさくらい)。
第1図はわれわれの面前で目撃者が画いた物体の最初のスケッチである。
そこで比較するために種々の円盤図を見せたところ、彼女は自分が見た物に似ているものとしてポトゥカトゥUFOを即座に選んだ。ただし或る明確な相違を指摘したけれども―。たとえば彼女は自分が見た物体は三脚の着陸装置を持たず、三段から成るハシゴが付属していたと確信した。
さて彼女は大ざっばに類似しているものとしてポトゥカトゥ型円盤を選んだので、第2図に示されるような輪郭を描き、種々の細部すべてを彼女に描き込んでもらった。アンテナ、ドーム、ドームを形成する面の数(4面だと彼女は思った)、フチ等である。
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▲第3図 |
目撃者がきわめて強く感じたのは、円形の変化光(複数)が並んだフチは右廻りに廻っていたということである。しかも終始開いたドアーと地面に垂れた三段のハシゴが見えたし、ドアー自体は動かなかったという。
私個人の印象によれば、これについて考えられることは、絶えず変化する一列に並んだ丸い色光のために旋回運動が起こっているという誤った考えが彼女に浮かんだのかもしれないということである。それとも物体の型がもっと異なっていたのではないかとも思う。
つまりこの場合は色光群はドア一面よりも低い面にあり、実際には色光群と外縁の低い面が旋回する一方、ドアーを含む外縁の上部は静止していたのかもしれない。こちらから暗示を与えることなしにいずれ彼女がこのことを確証してくれることを願っている。
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▲第4図 |
さてここで彼女の話のなかで最も驚くべき部分に入る。というのは着陸したUFOの前に身長約2メートルの怪人が立っていたというのだ。「3人ともからだにぴったりした光る黒い服と同じく光る黒い長グツを着用していました。」(第3図)
それらの1人は片腕の下に一種のチューブをかかえていた。彼女の見るところではそのチューブは長さ約60センチ、直径約7センチだった。この胴(武器か?)のまわりには螺旋形の光るアルミニウムのような別なチューブがついていた。更に目撃者が確信するところによれば、第4図に見られるようにチューブの後端に2本の細い突出物があったという。
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▲第5図 |
彼女と怪人たちとのあいだの、バスから20メートルばかりのところに、彼女の方へ背を向けて3人のブラジル人警官とその背後に約20名ばかりのブラジル人がいたというが、その全員が怪人と直面していた。そして道路上、バスの前方に、2台の警察無線パトロールカーが停止していた。(第5図)
警官たちは手に拳銃を持っていた。ちっとのあいだ2つのグループは向かい合ったまま立っていたが、突然UFO怪人の1人の腕にかかえていたチューブから炎のような銀色の強烈な集中光線を放射した。光線が警官と見物人たちの一団に向けられると、その前列にいた人々(警官を含む)が完全に動きを止められ、マヒしてしまった。しかし前列にいなかった他の多くの人々も影響を受けたことが彼女にわかったし、数名は失神したかのように倒れるのが見えた。また特に気づいたのは、怪人はチューブを振らないで、腕の下にチューブをかかえたまま全身をぐるりと動かした。
3名のUFO怪人は終始きわめて冷静に見えたが、やがて物体の方へゆ句くりと歩いていって、ドアーから中へ入った。すると物体は離陸して急速に上昇し、雲の中に消えていった。目撃者はこの事件が約15分間続いたとみている。
以上が驚くべきエピソードであったと思われる事件の予備報告である。もしこれが目撃者がいう時間(15分)ほど続いたとし、バスの中に他の乗客(複数)がいたのならば、多数の見物人と3名の警官以外に更にかなりの数の目撃者がいなければならないことになる。ところが全く困ったことに、われわれはこれまでにだれからも何も聞いていないのだ。一方この際注目すべき重要なことは、この若い女性の物語には全然確証がないのではないということである。というのは実は11月22付の新聞にこの事件の短信が載って、それがFRSに送られているからだ。
バレイア事件との比較
バレイアの着陸事件の内容とそのときの怪人及び現場で見られたチューブのスケッチ等を示されて、彼女は即座にそれを認めて、自分が見た怪人”武器”と同じものだと主張した(彼女が自分の体験のすべてを語った後にバレイア事件を知らされたことを強調する必要はないと思う)。
彼女が確信することが2つある。1つは目撃された3名の怪人は頭上にアンテナをつけていなかったこと。だがここで指摘されねばならぬのは、バレイア事件の目撃者ファビオ・ジョセ.ディニスが、怪人中の1人だけが ― 棒状の器具を持っていたヤツでなく ― ヘルメットの頂上にアンテナを付けていたと全く明確に述べていた点で、ウルヴィオ・プラント・アレイショ博士の記事の、ゴードン・クレイトンによる訳文中でも強調されている。またバレイアで見られた怪人たちのその1人が頭上にアンテナをつけていなかったからといって、わが女性目撃者の物語がバレイア事件の内容と相違するとはいえない。
次に彼女が極力主張するのは、自分が見たUFOはバレイアで見たといわれる物の路画とは”全く違う”ということだ。一方 ― 三脚型着陸装置のかわりに三段のハシゴがあった件は ― 別として ― 彼女は自分が見た物体とポトゥカトゥで少年たちが見たといわれる物とは同じだと強く思いたがっていた。
仮定的結論
わが若き淑女は全くまじめな正直な人であるように見えた。話しているあいだ動揺したことはない。ただしすでに述べたように、円盤の外縁とそこに並んだ変化色光とが回転していたかどうかの一点だけには本人も疑惑も感じている。(いずれにせよそれが右廻りに廻っていたという考えをわれわれが無意識に彼女に”注ぎ込んだ”とはいえないと思う。そのようなことはたしかにわれわれが聞きたかったことではない。われわれの持論はかかるUFOの回転<機体の一部の回転>は常に左回りだという考え方に傾いているからである)
英国の如き小さな国の懐疑的な人々のなかには、人里離れた田舎の一地点でバスが15分間も停車するのを変だと思う人があるかもしれないが(チャールズ・ポウエン注=ぺつに驚くことはない。英国の公共輸送機関、特に南部の列車は都会地でさえもしばしば長時間不可解な停車をする!)、確言できるのは、米国や特にブラジルのように広い国土を長時間のバス旅行をした人ならば、運転手や乗客にとってこのような”息抜きの停車”は普通のことであることがわかるだろう。しかも目撃者が説明するように、事件が発生した場所は実際にこの走程の中間点である。
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▲ブラジル南部地図 |
もしこの目撃者がバレイアの怪人や物体、ポトゥカトゥのUFOなどのスケッチ類をすでに見たことがあって、その後に物語をでっちあげることにしたのだという人があれば、次のように尋ねさえすればよい。「そのスケッチ類を本人はどこで見ることができたのか?」と。これらのスケッチはウルヴィオ・ブラント・アレイショ教授の自家版謄写刷り会報とFRS誌に載っただけで、われわれの知る限りブラジルの出版物に出たことはない。しかも本人がそのスケッチ類を見た上で、それに基づいてインチキ物語をでっちあげたとすれば、3名の怪人が各自の頭上にアンテナをつけていたということと、ポトゥカトゥの着陸事件に関する私の記事に付けたスケッチ類に示されるように物体が3木脚を持っていたということをなぜ彼女が主張しなかったのか?
これまでのわれわれの結論は次のとおりである。この事件はたしかに事実であるようで、軍の権威者が他の目撃者が名乗り出るのを封じてしまったのだ。
われわれは今後も調査を続けるつもりだが、その詳細は当座伏せておくほうが賢明だろう。目撃者にもたびたび会う予定でおり、本人のいう発生場所へ本人と共に行くつもりでいる。いうまでもなく、3人のブラジル人警官を含むあの多勢の目撃者たちやその居住地をつきとめるように慎重な努力を重ねるつもりでもある。
(終わり) |