オーソドックスな科学は、月は全く大気のない世界だと主張してやまなかった。そのおもな理由は、月の6分の1という弱い引力では多量の大気を保つことは不可能だということにあった。実質的な大気の存在を示す徴候が現れても、ほとんどのオーソドックスな科学者に無視された。彼らはかねてから弱い引力しかないことを確信していたからである。
しかし月には強い引力があるという証拠は常に出てきたのだ。この章の目的は大気がないという月に存在する諸条件の明確な概念を読者に与えることにある。あとで重要な大気存在の証拠が出てくるときに隠蔽の範囲を明らかにするつもりである。
真空ならばホコリはたたない
月面に存在すると考えられる諸条件に関する分析は、1969年にUSニューズ・アンド・ワールド・レポートの記者たちが書いた『月面のアメリカ』の中で次のように述べてある。
「かりに月が過去において大気の成分をつくり出したとしても、月の引力が弱すぎるので、地上に生命をもたらす酸素、窒素その他のガス類は宇宙空間に逃げてしまうだろう。大気がなければ月の表面には水もないだろう。
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▲アポロ8号が撮影した月から昇る地球。空の部分は真っ黒に塗りつぶし、月の地平線は不自然にシャープになっている。©NASA |
人間が月の表面から空をながめれば、全宇宙を全くの不毛の空間と決め込んでしまうかもしれない。星々は夜も昼も見えるけれども、それをまたたくように見せかける空気が存在しないために、全然またたかないのである。星々のあいだの広大な宇宙空間は、まっ暗闇なのだ。月から見れば太陽は耐えられないほど強烈に輝く球体のように見えるが、そのまわりの空は真夜中のようにまっ暗である」
月面の真空状態も、地球上よりもはるかに異なった具合で月面にホコリを舞い上がらせるだろう。こうした実験の要約として、フランクリン・M・ブランレー著『月の探険』で述べられた情報から引用してみよう。
米マサチューセッツ州ケンブリッジのスミソニアン天文台のフレッド・ホィップルは、ホコリを濾過して分離させるガス類がなければ、ホコリの微粒子は互いにくっつき合ってしまうはずだと主張している。その結果、ホイップルとその支持者たちは、月面のホコリは非常に強く固まってしまうので、人間とその乗物を支えることの可能な地殻が存在するだろうと主張している。
このことを確証するための実験が、ノースアメリカン航空会社のドゥエイン・ボウエンによって行われた。鋼製の球がこまかいホコリ状の微粒子を入れた容器の中に放たれて、すぐに沈んだ。この球を擬似真空内の同じ条件下で落としてみると、球は表面で止まった。ホコリ微粒子から成る表皮がひどく固まっていたために、球を支えるに足る半固形状態ができたのである。
1971年に出された著書『宇宙の未開拓地』の中で、ヴュルナー・フォン・ブラウンでさえも右の理論に同調していたらしい。彼や多くの人々は、月面でホコリがひどく散乱することはあり得ないと考え続けていたと述べている。
フォン・ブラウンによると、簡単な実験の結果、月面のような真空内でのホコリは固まってしまい、隣接したホコリの粒子は互いに溶けて軽石のような物質になってしまうという。この情報からみても、擬似真空中にホコリは存在し得ないことは明らかである。月が地球の表面引力の6分の1の引力しかもたないとすれば、大気を保ち得ないだろうし、表面はまず固まったドロのように固くなるだろう。
大気がなければどうなるか
もう1つ、月に関する古い考え方に、風化や浸食作用のシルシはないというのがある。その理由として、風化や浸食は基本的には雨や風のような大気現象の結果であるからだというわけだ。真空中では雲、雨、風などは存在し得ない。その結果、大方の意見としては、月には丸味を帯びた山はほとんどなく、ギザギザのとがった土地があるだけだということになっていた。もし浸食や風化現象が見られたとすれば、それは火山活動、隕石の落下、温度の変化、太陽風などのせいだということになる。太陽風は太陽からの水素とヘリウムガスの超音速流動であり、これは太陽系内を絶えず吹きまくっている。
月面に水は存在しないだろうともいう。水があるとしても昼間の暑気でそれを蒸発させるし、引力が弱いので水蒸気が空中へ逃げるのを防ぐことができないからだ。
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▲宇宙飛行士オルドリン。地平線が極めてシャープに出ている。©NASA |
空気と水がなければ、地表の色の変化は火山活動や隕石落下で起こるだけだろう。また天候や植物がなければ季節ごとの色の変化も起こりようはない。
月の1日は地球の1日よりも28倍長い。したがって太陽が月の日の出から日没まで月の上空をまわるには、地球の(1日を24時間として)14日間を要する。月の夜も地球の夜よりも28倍長く、これは地球の14日間に相当する。大気がなくて、しかも地球よりも28倍も長い昼夜のサイクルをもつのであれば、月の毎日の温度はカ氏500度以上のさまざまな温度になるだろう。長い月の1日は地表を高温にし、大気がないのだから熱が急速に逃げることもない。地表から熱を運び去る空気がないからだ。
夜間はこれと逆の状態になる。地熱は大気がある場合よりももっと急速に空中へ放散してしまい、長い夜のために温度は極端に低下してしまう。
一方、地球の大気は夜間に地熱が逃げるのを防ぎ、昼間に急上昇するのを防いでいるのである。
月面では昼間でさえも影の部分と日光に照らされた部分とのあいだに温度の大差がある。これは影の部分の地熱は急速に逃げるけれども、日照部分の熱はそうでないからだ。この現象は地球でも高地の空気の薄い所で認められる。
光の拡散も起こらないはず
影と日照部分との温度差は他の問題をもひき起こす。日光にさらされない物質は、低い温度のためにほとんど抵抗なしにもろくなって崩れる。
一方、高温下の日光にさらされた物体をすぐに手にとることはできない。日光に部分的にさらされた物体のみが、日照部分と日陰の部分との温度差により、極端に破壊的を熱の圧力を受けるのである。だから月面に着陸した宇宙船や科学測定装置などは、適当に保護してないとこうした問題をひき起こすだろう。もし宇宙飛行士が1カ所にあまりに長くいると、体の片側は煮られてしまい、他の側は凍りついてしまうことになる。宇宙服を着ないで日光にさらされながら岩の上か月面車の座席に座っていたら、フライにされるだろう。
大気がなければ光の拡散は起こらない。影の部分は他の場所から来る反射された光によって照らされるにすぎない。こうした他の光源がなければ、影の部分にある物体は、完全ではないにしてもほとんど見えなくなる。
太陽を写真に撮れば円形が鮮明に浮き出て、暗黒は太陽のコロナにまで及ぶだろう。また太陽のまわりのハロ(後光)も見られない。大気による拡散(光を散らすこと)も屈折(光を曲げること)も起こらないからだ。月面の日没や日の出現象も、大気中の拡散や屈折が存在しないので、起こらない。空気中のホコリや、ホコリを支える大気がなければ、光の拡散は発生しないのである。
光の屈折
大気がなければ月の上空で隕石が燃えるのも見られない。加うるに星々も月によって掩蔽(えんぺい)されるようには見えない。星々は月または他の惑星によって食になるときに掩蔽される。もし惑星が大気をもつならば、その惑星の表面に近い星々は光の屈折作用により、かすんで赤味を帯びるようになる。そして他の星々と置き替えられるように見えるが、その惑星の円形の緑によって実際に覆われたあともちょっとのあいだは目に見えている。この屈折すなわち光の曲がりによって大気がない場合よりもやや早目に惑星の反対側に星が現れるように見えるのである。
日食のあいだに太陽は月の大気を透して輝く(月に大気があるとすれば)。このために月のまわりに光の屈折によるハロが生ずるのである。
ホコリで悩むはずはない
月へ行った宇宙飛行士たちはホコリで悩むことはなかったはずである。ホコリは真空中には存在しないからだ。彼らが何とかしてホコリを作り出して、真空中でそれを服に塗りつけたとすれば、ほとんど取れなくなるだろう。ホコリはニカワのようにくっつくからだ。
大気がなければ、油のさしてない可動部分をもつ通常の機械類は、機能がとまるだろう。通常、機械の表面に接している空気の分子の層は、その表面が互いに接触するときにくっつき合うのを防ぐ傾向がある。したがって大気がなければあらゆる表面はひどく粘着するだろう。
月には大気が存在する
月に強い引力が存在すると示唆すれば、これは古くからある月の真空説にとってとんでもないことだろう。月の強力な引力が大気の存在を意味するのは、月から絶えず放たれる蒸発性物質やガス類が引力から逃がれ得ないからである。月は、地表の空気の密度が基本的に不変の状態にあるような平衡状態にまもなく達するだろう。大気の圧力も地球と同様に高さできまるだろう。読者は実質的な大気が存在する証拠は強い引力が存在する証拠でもあることを考えるべきである。1つの主張にたいする証明は他の主張をも証明するのだ。
月の実質的な大気は、雲、天候、浸食、水、植物、動物などが存在するかもしれないことを意味している。しかし月の長い昼夜や他の事実により、月面の諸条件は地球と同じではあり得ない。
次章では月の真空説を批判し、これが古くさい6分の1引力説と同じほどに価値のないことを示すつもりである。NASA(米航空宇宙局)の隠蔽事の驚くほど多くの秘密漏洩によって、月が地球に似た大気を持つという莫大な証拠を提供している。しかしNASAから出た証拠に加えて他にも多くの情報源がある。これをかなり詳細に調べることにしよう。
第7章(1)へ続く |