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  ファティマの謎の太陽円盤 7つの謎と奇跡 より

第3章 二回目の出現 群集も異常な現象を認める
 

ついに6月13日が来た。この日マルト家もサントス家も、いっさい知らぬふりをすることにきめて、特にマルト家の両親は早朝からボルト・デ・モスの市場へ出かけてしまった。うるさい騒ぎに巻き込まれたくないというわけだ。

3人の子供は幻の貴婦人との約束を果たすために、早朝、羊をつれ出したあと、6時には帰宅して、また出かけた。目的地はコバ・ダ・イリアの盆地である。

この日も快晴で、ファティマは聖アントニオの祝祭日とあって、どこもかしこもお祭り気分に溢れていた。しかし3人の子供の行動をひそかに注視する60名ばかりの群集がいて、これらが子供たちのあとをぞろぞろとついて来たあげく、コバのヒイラギの茂みのなかに待機したのである。何事が発生するのか、この目でたしかめようということらしい。

3人の子供はロザリオを唱えた。終わるとすぐにルシアが立ち上がって叫んだ。

「光が見える―貴婦人さまがおいでになります!」

3人は先月に影像が出現したヒイラギの木の方へ接近した。ルシアが空中の一点に向かって歓喜に満ちた表情で話しかける。

「何をお望みですか?」

神々しい貴婦人は微笑を浮かべて答えた。

▲ポルトガル、ファティマにおける5月13日の大聖堂前の大祭の様子。毎年数10万人の信者が集まる。
▲ポルトガル、ファティマにおける5月13日の大聖堂前の大祭の様子。毎年数10万人の信者が集まる。

「来月の13日にまたここへいらっしゃい。毎日ロザリオを唱えなさい。そして、あなた方は読み書きができるようになってくださいね。そうすれば、私の望みをお話ししましょう」 

周囲で目を皿のようにして凝視している群集には何も見えない。ルシアが話しかける声と、6月の微風の音が聞こえるだけだ。

フランシスコは依然として姿も相手の声も感知できず、ルシアの声もよく聞きとれなかったので、あとで説明してもらう必要があった。

このコンタクトで、貴婦人はルシアに対して秘密の話を伝えた。軽々しく口外するなといわれた重要な内容である。このことは後に修道女になったルシアが10年後に発表した手記で明らかにされたが、それによると、自分たちも天国へつれて行ってくれというルシアの願いに答えて、美少女の幻は、フランシスコとジャシンタの2人を遠からず迎えに来るけれども、ルシアはこの世に長く生き残って人々の信仰を高めるための奉仕を続けなければいけないという意味のことを述べたという。

たしかにフランシスコとジャシンタの2人は、2、3年後に風邪がもとで他界している。

この2回目の出現は約15分間で終わった。その間、聖母の幻像が立っていたヒイラギの木は、何かの荷重がかかったかのように枝が下へたわみ、貴婦人が去って行くことをルシアが告げたときは、その衣服で引っ張られるかのごとく枝がすべて空中の東の方向になびくのを目撃した人が群集のなかにいた。こうして、このときから数10名の支持者が生じることになった。

だがルシアの母親はまだ娘の体験を信じない。むしろどうにかすると狂気のようになって娘を責めてはウソであることを告白させようとするが、娘は頑として応じない。再度、主任神父に会わせて取り調べを受けさせたけれども、ルシアは黙り込んで、明瞭に説明することを拒むだけである。しかも神父は悪魔のたぶらかしだとおどす。こうした一連のトラブルにより、子供心にも3人はよほど悩んだらしい。この間の事情は後年ルシアが書いた『思い出の記』のなかに詳細に述べてある。

3回目の出現 ロシア問題と大戦との予言!

続く第3回目の7月13日が近づいて来た。この頃ルシアはもう絶望的になっていた。わずか10歳の少女がこうまで苦しみにさいなまれるというのも悲痛な宿命だが、これも聖母が告げた世のための犠牲になることにより、人々の信仰を強化するための一端であったのだといわれている。

12日の夕刻には、早くも13日の聖母の出現を期待した徹夜組が、コバ・ダ・イリアに殺到していた。すでにこの頃は事件が近隣一帯に知れ渡り、信ずる者や野次馬の話題の的になっていたのだ。

悪魔の仕業ではないかと神父から言われたルシアはすっかりいやになり、13日にはコパへ行かないことにしていたが、フランシスコとジャシンタの激励を受けてやっとの思いで家を出た。

コパ・ダ・イリアの盆地へ来た3人は驚いて立ちすくんだ。なんと5〜6000人の群集がひしめいて、子供たちの到着を待っている! 3人は人垣を押し分けて、例のヒイラギの木のそばへたどり着いた。

正午頃、稲妻に似た閃光がきらめいて、聖母の影像が現れた。ルシアが大声で叫ぶ。

「みなさん。地面にひざまずいてください!」

続いて彼女は空間に向かって話しかける。もちろん高貴な美少女が見えるのはルシアとジャシンタだけだ。群集には何も見えない。人々はかたずをのんでルシアを注目する。夏のイベリア半島の太陽は強烈だ。しかし人々はみじろぎもせずにルシアの声に耳をかたむける―。

ルシアは前回どおりに、どこから来たのか、何を望んでいるのか、と尋ねた。

聖母とおぼしき幻は ― というのはこの貴婦人はみずからイエス・キリストの母親だと名乗ったわけではないからだ ― 来月13日にまた来るように、そして10月になったら奇跡を行うのでそうすれば、だれもがルシアの体験を信じるだろうと、5月のコンタクトのときと同じことを繰り返してから、ルシアが人々から依頼されていた願い事を伝えると、本人たちがロザリオを忠実に唱えれば本年中にかなえられるだろうと答えた。

続いて聖母はルシアに対して、時機が来るまでは絶対に口外してはならぬと命令した上で、重要な秘密を口述した。この内容はルシア自身の手記に秘められたままレイリアの司教のもとに保管されていたが、25年後の1942年にカトリック当局から公開された。ただし一部は削除されている。大要は次のとおりだ。

(1)聖母はルシアに向かって「罪人のために犠牲になれ」と述べたあと、6月の出現時と同様に両手を開いた。すると手から不思議な光線が流れ出て大地に浸透し、そこに大いなる火炎の海が展開した。見ると、悪魔と悪人の魂が紅蓮の炎のなかに投げ込まれて、もだえ苦しんでいる恐ろしい光景が目に映じた。これは瞬間的にヒイラギの木の下で見えた。

(2)この光景は罪人が地獄へ落ちる様子を象徴的にあらわしたもので、彼らを救うには、主の汚れなき御心に対する信仰を盛んにする必要がある、と聖母は述べた。

(3)戦争(第1次大戦)は終わりに近づいた。しかし人類が神に逆らうことをやめなければ次の法王(ピオ11世)のときにまた大きな不幸が起こるだろう。

(4)いずれ夜間に不思誘な光が発生するだろう。これは戦争、飢饉、法王と教会に対する迫害の始まりで、世界に対する神の第二の天罰がくだされるシルシである。

(5)この不幸からのがれるには主の汚れなき御心に奉献し、毎月第一曜日につぐないの聖体拝領をすること。私の願いを人々が聞きいれるならばロシア(ソ連)は改宗し、世界は平和になる。さもなければ、ロシアはその誤り(マルクスレーニン主義?)を世界にまき散らして、戦争をあおりたて、教会を迫害し、沢山の善良な信者が殉教し、多くの国が滅亡する。(このあと重要な言葉が続くらしいが、秘密となっでいる)……その結果、ロシアは改宗し、世界に平和が来るだろう。

(6)以上の内容を口外してはならない。ただしフランシスコには話してもよい。

語り終わった聖母は静かに東方の空へ消えて行った。このとき群集には聖母の姿は見えなかったが、ひとかたまりの白雲が3人の子供をとり囲んだのを目撃した。また太陽が急に暗くなって、気温が低下したので、大群集からどよめきの声があがった。こうした不思議な現象はすべて記録されている。

さて、右の予言類は重要である。無神論国家になったソ連をどうのこうのというのはわかるが、いずれソ連も改宗して世界に平和が来るというのは、第3次大戦の発生と大変動の終局後を意味するのだろうか。とにかく、なまぐさい政治問題を含んでいると思われるこの第3回目の予言が最も意味深長なものとされているのだが、真相は不明である。

第4章へ続く

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