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  神々の戦車 エーリッヒ・フォン・デニケン

第10章(2) 地球人の宇宙開発の意義 UFOと宇宙 No.5 より 
 

産業時代における宇宙開発に重要な論議を起こさせている重大な要素は、種々の新しい産業部門の出現である。オートメーション化によって職を失った数十万の人々がそれにより生活しているのだ。

新しい産業も出現する

宇宙開発産業は市場における一つの分野として自動車や鉄鋼産業を追いこしてしまった。四千種類以上の新しい品目が宇宙産業のおかげで存在している。それらはより高い目標を目指した研究の副産物なのである。この副産物はどうして出来たのかをだれも考えることなしに日常生活の一部になってしまった。電子計算機、超小型の送受信機、ラジオやテレビ受像機に使用するトランジスターなどは、宇宙開発の途上で作られたものである。

▲1973年6月30日、皆既日食調査のため出動した超音速機コンコルド001がアフリカ上空で撮影したUFO。フランス国立科学調査センターが半年間科学的に調査を行って本物のUFOと断定し、1974年1月31日に国営テレビで放映された。白く光るナゾの物体の直径は200mと推定されている。

食物がこげつかないフライパンもそうだ。あらゆる航空機に用いられる精密計器類、完全自動の地上誘導着陸装置や自動操縦装置、それに急速に発達してきたコンピューターなどは多くの非難をあびた宇宙開発の一部分であり、個人の生活にも影響をおよぼしているのである。素人にはわからないような物は沢山ある。真空内の新しい熔接や給油方式、光電池、無限の距離を征服した新しいエネルギー源などもそうだ。

宇宙開発にそそがれた税金の洪水から大投資のはね返りが確実な流れとなって納税者にもどってくるのである。宇宙開発をまったくやらない国は、技術革命によって押しつぶされるだろう。テルスター、エコー、リレー、トリオス、マリナー、レインジャー、シンコムというような名称と概念は、限りなく続く開発の途上の道しるべなのだ。

地球のエネルギー供給量は無尽蔵ではないので、宇宙旅行計画はいつか重要なものとなるのだろう。なぜなら我々は都市の照明や家屋の暖房のために火星その他の惑星から核分裂物質を手に入れる必要があるからだ。原子力発電所は今日すでに最も安いエネルギーを供給しているので、大量生産工場はいずれこの原子力発電所に頼るようになる。だがそのころには地球で核分裂物質がとれなくなるだろう。

開発の新しい成果は毎日我々を圧倒している。父から子へゆっくりと知識を伝えるやり方は永久に終わってしまった。ただボタンを押すだけで鳴り出すラジオセットを修理する技術屋もトランジスターやプラスチック坂にプリントされた複雑な配線についてよく知っていなければならぬ。そしてその人がマイクロ・エレクトロニクスの極小部品を扱わねばならぬときはそう遠くないだろう。今日徒弟が教えられた事を明日は新しい知識でおぎなわねばならないだろう。祖父の時代に技術を身につけていた人は生涯食ってゆけるだけの知識をもっていたが、現代と未来の技術屋は古い技術にたいして常に新しい知識を加え続けねばならないのだ。昨日は正しかったものが明日は時代遅れになるのである。

数百万年を要するにしても我々の太陽は燃えつきて、いつかなくなるだろう。人類の終局をもたらすには、血迷った政治家が核爆弾のボタンを押すときのあの恐ろしい瞬間を待つまでもあるまい。はっきりとはわからぬ予想もできないような宇宙的大事件によって、地球の終滅がくるかもしれないのだ。人間はこれまでにそのような可能性を考えたことはなかった。そのために人間は数千の宗教のどれかに魂の不滅の望みをかけていたのだろう。

そこで私がいいたいのは、宇宙開発は人間の自由な選択の産物ではなく、宇宙における未来の予想をたてるときに起こる内奥の強い衝動に従っているということである。はかり知れぬ遠い昔、地球は宇宙からの訪問を受けたという仮説を私は出しているのだが、それでもう一つ考えたいのは、地球人だけが宇宙における唯一の知性体ではないということである。実際はもっと古くてもっと進歩した知性体が宇宙空間に存在すると思う。更に私が、あらゆる知性体が独自に宇宙開発をやっていると主張すれば、これはもうSFの領域にはいってしまうことになるだろう。そうなると私の頑をハチの巣に突っ込むことは目に見えてわかっている。

宇宙開発には報いがある

さて少なくともこの二十年間、ときどき"空飛ぶ円盤"が話題に出てくる。この間題を扱った文献では"UFO(未確認飛行体)"といわれている。だがこの神秘的なUFOのスリルに富んだ問題をとり上げる前に、私は宇宙開発計画の正当性が論じられる場合によく出てくるある重要な論拠について述べてみたい。

▲1975年に打ち上げ予定の米国アポロ宇宙船とソ連ソユーズのドッキング模型。

宇宙開発計画は利益にならないといわれている。つまり、どんなに富裕な国でも、国家的な破産の危険をおかすことなしに宇宙開発のぼう大な経費を捻出することはできないのである。たしかに研究それ自体は全然もうけにはならない。投資を利益に変えるのは研究の産物なのである。現段階において宇宙開発から利益や償却を期待するのは道理に合わぬことである。宇宙開発の四千種にのぼる副産物の収支計算がまだ出てこないのだ。

だが私は、他の分野の開発ではまず与えられることのないような報いがあることに絶対疑いはないと思う。それが目標に達したときには収益があるばかりでなく文字どおり人類を破滅から救うだろう。コムサット衛星のシリーズはすでに健全な商品になっているのである。

一九六七年十一月にドイツのシュテルン誌は次のような記事をかかげた。

「医療機械の多くはアメリカから来ている。それらは原子力研究、宇宙開発、軍事技術などの成果の組織的評価の副産物である。しかもそれはアメリカの巨大産業と病院群との協力の産物であり、これが医学を日々新しい勝利に導いているのである。

こうして、スターファイター機を作っているロッキード社と有名なメイヨ一病院は協力してコンピューター技術に基づく新しい看護法を開発した。ノースアメリカン航空機会社の技師たちは医学界からの情報に従って"気腫ベルト"の製作をやっている。これは肺疾患の患者呼吸を楽にするためのものである。米航空宇宙局はある診断装置のアイデアを生み出した。この装置はもともと宇宙船に衝突する微細な宇宙ジンを測定するために考案されたものだが、これはある神経症に起こる筋肉の小さなケイレンを記録するために用いられている。

アメリカのコンピューター技術の医療副産物として、もう一つ脈搏促進機がある。今は二千人以上のドイツ人がこの装置を胸の中に入れて生きている。それは電池で作動する超小型のモーターで、皮膚の下に入れるのである。医師はこの機械の導線を上部大静脈を通して心臓の右心室へつなぐ。すると心臓は一定の電流の流れにより刺激を受けてリズミカルな運動をし、鼓動するのである。三年後にこの機械の電池が切れると比較的簡単な手術によってとりかえることができる。

ゼネラル・エレクトリック社は昨年この医学技術のちょっとした奇跡を改良して、2スピードの型を開発した。この装置の使用者がテニスをしたり列車に乗ろうとして走ったりしようとする場合、本人は自分の機械が埋め込まれている位置の上で棒磁石を上下に動かす。すると心臓はただちに鼓動を早めるのである」

宇宙開発の副産物がもう二つある。これがむだな物だといいきれる人があるだろうか。一九六七年十一月のツァイト紙には「月ロケットによる刺激」という大見出しのもとに、次のような記事が出た。

「月面に軟着陸するために開発された宇宙船の設計は、自動車製造業者のちょっとした関心の的になっている。こうした設計で作られた乗物が機体の破壊を起こすような条件下でどのような作動をするかという知識が多少とも高まってきたからだ。どんな衝突に対しても乗客を安全に守る車を作ることは可能でないにしても、大成功した宇宙飛行の設計技術により、衝突が起こったときの危険を少なくすることはできるはずである。近代の航空機製作で次第に用いられだした"ハニコーム#ツ(ハチの巣状の板)は、軽量でしかも高度な抗張力を保証している。それは自動車製作においても実際にテストされてきた。試作されたガスタービンのロヴァー車の床はこの"ハニコーム"で作られている」

研究の現状やそれが激しい勢いで発達していることを知っている人なら、「星から星への旅などなにができるものか」というような言葉をもう黙認できないはずである。現代の若い世代はこの"不可能事″実現するのを見るだろう。途方もない強力なモーターのついた巨大な宇宙船が建造されるだろう。これについて一九六七年にソ連が成層圏で二機の無人宇宙船をドッキングさせて成功していることでわかる。

宇宙開発の一分野ではすでに一種の防御スクリーンの研究がすすんでいる。これは宇宙カプセルの前側にとりつけられて、微粒子の衝突をそらすためのものである。優秀な物理学者のあるグループは、タキヨンという名で知られているものを探り出そうとしている。これは光速よりも速く進行し、最低スピードで光速になるといぅ仮説上の粒子である。科学者たちはタキヨンが存在することを知っている。あとはただその存在を物理的に証明すればよいのだ。しかも "存在するはずがない"といわれるものに対する証明は、ニュートリノ(中性微子)と反物質に対してなされているのだ。最後まで宇宙開発反対を叫んでガタガタいう批判者に対しては次のように尋ねたい。

「現代最高の頭脳を持つと思われる数千の人々が、単なる幻想やつまらない目標を目指して情熱を打ち込んだ仕事をむだにするつもりでいると、あなたは思っているのか?」と。

第10章(3)へ続く

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